中島京子の「樽とタタン」を読んだ! | とんとん・にっき

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中島京子の「樽とタタン」(新潮文庫:令和2年9月1日発行)を読みました。

 

中島京子の、今から17年前、2003年のデビュー作「FUTON」には驚き、そして参りました。妻子もあり分別もある中年の作家が、茫然として彼女の蒲団の匂いを嗅いでいる場面で小説は終わります。ガツンと一発食らった感じでした。2010年、10年前ですね、「小さなおうち」では直木賞を受賞し、山田洋次監督で映画化されました。そして大作「夢見る帝国図書館」でしょ。着実にステップアップしています。

 

「夢見る帝国図書館」を読んだとき、以下のように書きました。

久しぶりに小説らしい小説を読みました。こういう言い方はいいかどうか、自家薬籠中のもの、いわゆる「手練れ」といえます。とはいえ、中島京子の力量はすでに評価が定着しています。

 

「樽とタタン」は、新潮文庫の最新刊として宣伝していたので、久しぶりに中島京子の作品を読みたいと思い、本屋で平積みされていたこともあり、購入しました。

 

本の帯には、以下のようにあります。

心にしみる最高のラスト

少女”タタン”が喫茶店で出会った

ヘンテコなで愛おしい大人たち

 

喫茶店のクセのつよいお客たち

わたし:

毎日放課後に喫茶店に通う小学生。あだ名は「タタン」。

老小説家:

常連客の白髪白ひげの小説家。気分屋。「タタン」の名付け親。

トミー:

歌舞伎役者の卵。毎回違う女の子とモーニングを食べている。神主がタニマチ。

学生さん:

鬼太郎のような髪型。猫背でいつも頭にヘッドフォンを載せている。

バヤイ:

サケウシという生物の研究者。「場合」を「ばやい」と発音する。

 

個別の短編の集まりのようにもみえますが、そうではなく、小さな喫茶店の無口のマスターと、その喫茶店の常連客と、そして少女タタンが3歳から12歳まで住んでいた小さな町の、じつはどこかしらつながった一つの作品となっています。いずれにせよ、わたし「タタン」が、その街を離れて30年以上経ってから、昔を思い出して書いています。

 

「あの店に来ていた客たちは、誰もがどことなく孤独だった。それぞれ家に帰れば、家族がある人もいただろうし、恋人がいた可能性もなきにしもあらずで、当然のことながら、それぞれの仕事関係の人脈などもあっただろう。だから、小学生のわたしにそんなふうに思われるのは心外かもしれないけれど、それでもなんだか、彼らはみんな独特のひとりぼっち感を漂わせていた」。

 

目次

「はくい・なお」さんの一日

ずっと前からここにいる

もう一度、愛してくれませんか

ぱっと消えてぴっと入る

町内会の草野球チーム

バヤイの孤独

サンタ・クロースとしもやけ

カニと怪獣と青い目のボール

さもなきゃ死ぬかどっちか

解説 平松洋子

 

 

中島京子:

1964(昭和39)年東京都生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒。出版社勤務を経て渡米。帰国後の2003(平成15)年「FUTON」で小説家デビュー。'10年「小さなおうち」で直木賞、'14年「妻が椎茸だったころ」で泉鏡花文学賞、'15年「かたづの」で河合隼雄物語賞、歴史時代作家クラブ作品賞、柴田錬三郎賞、同年「長いお別れ」で中央公論文芸賞、'16年日本医療小説大賞を受賞した。他に「平成大家族」「パスティス」「眺望絶佳」「ゴースト」「樽とタタン」「夢見る帝国図書館」「キッドの運命」等、著書多数。

 

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