ベルンハルト・シュリンクの「オルガ」を読んだ! | とんとん・にっき

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ベルンハルト・シュリンクの「オルガ」(新潮クレスト・ブック:2020年4月25日発行)を読みました。シュリンクの作品を読むのは、「階段を降りる女」以来のことです。

シュリンクといえば、あの「朗読者」の作者です。「愛を読む人」というタイトルで映画化もされました。

映画「愛を読む人」を(再び)観た! 

 

「オルガ」は、シュリンクには珍しく女性登場人物が自分自身を語る、いわば”女の一生”ものです。労働者の娘で、財産も人脈もなく、自分の手で進路を切り開いていくオルガは、きわめて自覚的な、しっかりした女性です。ドイツらしい、ドイツならではの小説です。シュリンクの新境地といっていいでしょう。

 

三部構成になっていますが、それぞれの章に意味があります。

第一部では、三人称でオルガの半生が語られます。

第二部では、語り手のフェルディナントが彼女との出会いを語ります。

第三部では、彼が30通ものオルガの手紙が明らかにします。

 

本の内容は、以下の通り。

女は手が届く確かな幸せを願い、男は国家の繁栄を求めて旅に出た。貧富の差や数々の苦難を乗り越え、激動の20世紀ドイツを生きた女性オルガ。彼女が言えなかった秘密、そして人生の最期にとった途方もない選択の意味が、最果ての町に眠る手紙で解き明かされる――。ひとりの女性の毅然とした生き方を描いて話題となった最新長篇。

 

山崎佳代子 短評
歴史は光と闇から生まれる。出会いと別れ、愛情と憎悪、殺戮とパン……。ポーランド系ドイツ人女性オルガの人生を縦糸に、十九世紀末期から二十一世紀までの欧州を横糸に、色鮮やかな模様を織り込んだ本書には、オルガの親しい少年アイクをはじめ謎がいくつか隠され、読み手を謎解きの迷路に誘う。不幸な出生に負けず正義を求めて生きるオルガと、広大な地を求め探検の旅に出た農園主の息子ヘルベルトとの若き日の純愛……。沈黙を分かちあうことのできる人との出会いこそが愛。愛とは希望。恋人に届かなかった手紙の束が、物語を静かに結ぶ。 

 

松永美穂は「訳者あとがき」で、以下のように書いています。

シュリンクは常に、読者に対して問いを投げかける作家だ。あなたがこの主人公ならどうするか。この選択肢について、あなたならどう判断するか。読み終わると、思わず誰かと語りたくなる。シュリンク自身がそれを目指して書いた小説なのだと感じさせられる。

 

ベルンハルト・シュリンク
Schlink,Bernhard

1944年ドイツ生まれ。小説家、法律家。ハイデルベルク大学、ベルリン自由大学で法律を学び、ボン大学、フンボルト大学などで教鞭をとる。1987年、『ゼルプの裁き』(共著)で作家デビュー。1995年刊行の『朗読者』は世界的ベストセラーとなり2008年に映画化された(邦題『愛を読むひと』)。他の作品に『週末』(2008)、『夏の嘘』(2010)、『階段を下りる女』(2014)など。2020年4月現在、ベルリンおよびニューヨークに在住。
 

松永美穂
マツナガ・ミホ

早稲田大学教授。訳書にベルンハルト・シュリンク『朗読者』(毎日出版文化賞特別賞受賞)、ペーター・シュタム『誰もいないホテルで』、ウーヴェ・ティム『ぼくの兄の場合』、ヘルマン・ヘッセ『車輪の下で』ほか多数。著書に『誤解でございます』など。
 

「ベアハルト・シュリンク作品のページ」

https://www.asahi-net.or.jp/~wf3r-sg/nt2schlink.html

 

過去の関連記事:

ベルンハルト・シュリンクの「階段を下りる女」を読んだ!

ベルンハルト・シュリンクの「夏の嘘」を読んだ! 

ベルンハルト・シュリンクの「週末」を読んだ!
ベルンハルト・シュリンクの「逃げてゆく愛」を読んだ!
「朗読者」再読!   
*「帰郷者」は読了はしたが、ブログ未収録

 

朝日新聞:2020年7月4日