「ストレンジャー 上海の芥川龍之介」を観た! | とんとん・にっき

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スペシャルドラマ『ストレンジャー 上海の芥川龍之介』

 NHK総合・BS4K・BS8K 

2019年12月30日(月)後9・00~10・13

 

昨年末に観た、NHKのスペシャルドラマ『ストレンジャー 上海の芥川龍之介』、録画してあったのを思い出し、再度観てから、その原作である「上海游記」を「青空文庫」で読みました。手持ちの文学全集の「芥川龍之介」巻に入っていなかったので・・・。

 

いよいよ東京を発つと云う日に、長野草風氏が話しに来た。聞けば長野氏も半月程後には、支那旅行に出かける心算つもりだそうである。その時長野氏は深切にも船酔いの妙薬を教えてくれた。が、門司から船に乗れば、二昼夜経つか経たない内に、すぐもう上海へ着いてしまう。高が二昼夜ばかりの航海に、船酔いの薬なぞを携帯するようじゃ、長野氏の臆病も知るべしである。――こう思った私は、三月二十一日の午後、筑後丸の舷梯に登る時にも、雨風に浪立った港内を見ながら、再びわが長野草風画伯の海に怯なる事を気の毒に思った。

 

こうして「上海游記」は始まりますが、なんのことはない、船が玄海にかかると同時に、みるみる海が荒れ初めた、というから面白い。船酔いの薬を用意すべきだったと、芥川は反省しています。「上海游記」は、「ストレンジャー~上海の芥川龍之介~」の原作となったもの、そう長くはない話で、一気に読めます。当時の上海の状況が、その雰囲気とともによく出ていて、芥川の文章が際立っています。『ストレンジャー 上海の芥川龍之介』は、それを忠実に映像化しています。もちろん松田龍平が、芥川と思えるほど雰囲気が出ていて、素晴らしい演技でした。

 

以下、NHKのサイトから…。

 

1921(大正10)年 特派員・芥川龍之介、激動の上海へ―
芥川が克明に活写した100年前の中国を8Kで映像化
日本有数の知性と巨龍・中国、20世紀史に刻まれた知られざる魂の交流!


今からおよそ100年前、大阪毎日新聞の特派員として上海を訪れた芥川龍之介。

このドラマは、日本文学の代名詞・芥川の小説世界と、当時の中国の現実を交錯させながら、20世紀史に刻まれた日中の精神的交流を世界に向けて発信します。

芥川を演じるのは、日本を代表する俳優の一人、松田龍平。撮影監督に、映画『十三人の刺客』で第34回日本アカデミー賞最優秀撮影賞を受賞するなど、日本映画界をけん引するカメラマン・北信康氏を迎え、ほぼ全編を上海で撮影。1920年代の中国が、8Kの圧倒的映像美で鮮やかによみがえります。


【あらすじ】
1921(大正10)年、芥川龍之介(当時29歳)は新聞社の特派員として上海に渡る。子どものころから「西遊記」などの古典に親しんだ芥川にとって、そこは憧れの理想郷のはずだった。だが、当時の中国は動乱のさなか。清朝を倒した革命は、やがて軍閥の割拠という混乱に至り、西欧諸国や日本が上海の租界をわがもの顔で支配し、民衆は壮絶な貧困にあえいでいた。
理想と現実のギャップに絶望すら覚えながらも、芥川の知性は巨龍・中国の精神世界へと分け入っていく。そこで出会うのは、革命の世で政治と向き合う知識人たちと、裏路地で日々をしたたかに生き抜く妓楼のひとびとだった…。

 

画像は、テレビから…。

 

 

 

 

 

 

 

「上海游記」青空文庫

https://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/51215_56381.html

 

「上海游記・江南游記」

講談社文芸文庫

著者:芥川龍之介

発行:2001年10月10日

大正10年3月下旬から7月上旬まで、およそ4ヵ月に亘り、上海・南京・九江・漢口・長沙・洛陽・大同・天津等を遍歴。中華民国10年目の中国をつぶさに見た芥川龍之介が、政治、文化、経済、風俗ほか、当時の中国の世相を鮮やかに描写。芥川独特の諧謔と諦観で綴った大正10年の中国印象記。表題作をはじめ「長江游記」「北京日記抄」及び、絵葉書に象徴的に記した各訪問地の感想「雑信一束」の5篇を収録。