オルガ・トカルチュク「プラヴィエクとそのほかの時代」! | とんとん・にっき

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オルガ・トカルチュクの「プラヴィエクとそのほかの時代」(松籟社:2019年11月30日初版発行)を読みました。

本の帯には、「ノーベル文学賞受賞 この1冊で、世界がトカルチュクを発見した」とあります。どうしてこの本を見つけたのか、いま思い出しても、よくわかりません。考えられるのは、ネットサーフィンの間に、上記の「ノーベル文学賞受賞」の文字が目に入ったからでしょう,たぶん。

本の帯には、以下のようにあります。
ポーランドの南西部、国境地帯にあるとされる架空の村プラヴィエク。そこに暮らす人々の、ささやかでありつつかけがいのない日常が、ポーランドの20世紀を映しだすとともに、全世界の摂理を、宇宙的神秘をもかいま見させるーー「プラヴィエクは宇宙の中心である。」
2018年ノーベル文学賞受賞作家トカルチュクの名を一躍、国際的なものにし、1989年以後に書かれた中東欧文学の最重要作品と評される傑作、待望の邦訳刊行。

ロシア文学と同様に、トカルチュクの作品も、読みはじめは地名や人名など、なかなかむずかしく、読むのに苦労しました。

さて、ここからは小椋彩の「訳者解説」から。
1989年の民主化を経て、あらゆる本があふれかえるポーランドの文学市場で、時代の空気を読み、それを独自のスタイルで表現しえた作家がトカルチュクだった。意識的に、時事問題から距離を置く。難解でないのに、どこか哲学的な物語をつづる文体は、修辞的で華やかでありつつシンプルだ。
本作は、トカルチュクの長編3作目だ。ドルノ・シロンスクの国境の村タシュフ付近、ポーランド南西部に位置する架空の村プラヴィエクを舞台に、84の断章で描かれる。(おもに)人間の日常が、ポーランドの激動の20世紀を浮かび上がらせる。

このあと、「中欧的断片と神話的トポス」と「時間についての物語」という重要な解説が続きますが、ここでは省略します。小椋彩が解説執筆中、トカルチュクがノーベル文学賞(2018年)を授与された報を受けたという。他者への共感や弱者への温かいまなざしに貫かれた本作は、発表から四半世紀近くが経過しようとしているが、作品は古びることなく、それどころか、時代に即した新しい意義を得ているように感じられると、小椋彩は結んでいます。

オルガ・トカルチュク:
ポーランド共和国西部スレフフ生まれ。ワルシャワ大学で心理学を専攻、卒業後セラピストを経て作家となる。長編第3作となる本作「プラヴィエクとそのほかの時代」(1996)によって作家としての地位を確立、国外にも知られるようになった。強靭な知性と博識に裏付けられた、日常と神秘が隣り合うその作品世界は、国内外で多くの読者に支持されている。2018年のノーベル文学賞を受賞。