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構造展ー構造家のデザインと思考ー

構造家 佐々木睦朗 特別講演会

2019年10月5日(土)

14:00-15:30(13:30受付開始)

会場:寺田倉庫TERRATORIA

 

登壇者プロフィール

 

佐々木 睦朗(ささき むつろう)|構造家・法政大学名誉教授

■略歴
1946年  愛知県に生まれる
1968年  名古屋大学工学部建築学科卒業
1970年  名古屋大学大学院工学研究科修士課程修了
1970〜1979年  木村俊彦構造設計事務所勤務
1980年  佐々木睦朗構造計画研究所設立 
1998年  博士(工学)を名古屋大学で取得 
1999〜2004年  名古屋大学大学院工学研究科建築学専攻教授
2004〜2016年  法政大学工学部建築学科教授
2016年 法政大学を定年退職、同大学名誉教授
■主な受賞歴
1991年 松井源吾賞/美和ロック工業玉城工場の構造設計
2003年 日本建築学会賞(作品)/せんだいメディアテーク
2004年 国際シェル・空間構造学会 TSUBOI PRIZE(論文)
他多数受賞
■主な著書
「構造設計の詩法」,1997年12月,住まいの図書館出版局
「FLUX STRUCTURE フラックス・ストラクチャー」,2005年6月,TOTO出版
「構造・構築・建築 佐々木睦朗の構造ビジョン」,2017年2月,LIXIL出版

 

難波 和彦(なんば かずひこ)|建築家・東京大学名誉教授


1947年 大阪生まれ
1969年 東京大学建築学科 卒業
1974年 同大学院博士課程 修了
1977年 界工作舎 設立
2000年 大阪市立大学建築学科教教授
2003年 東京大学大学院建築学専攻教授
2003年〜2015年グッドデザイン賞審査委員
2010年 東京大学 名誉教授
2013年〜2017年放送大学 客員教授
現在 (株)一級建築士事務所 難波和彦・界工作舍 代表。工学博士
主な受賞
1995年 新建築吉岡賞、住宅建築賞、東京建築賞
2004年 JIA環境建築賞
2014年 日本建築学会賞 業績賞

 

構造家 佐々木睦朗 特別講演会

 

佐々木睦郎には、「構造・構築・建築 佐々木睦郎の構造ヴィジョン」(LIXIL出版:2017年3月15日初版第1刷発行)という主著があります。長年勤めた法政大学を定年退職したときに、難波和彦の肝いりで、作成されたものです。「構造デザインの射程」という名のもとに、かかわりのあった建築家・構造家・建築史家などを招いて、8回にわたって対談したものを第1章に、そして「佐々木睦郎構造計画研究所アーカイヴス」を第2章に載せたものです。

 

この本は、僕はパラパラと斜め読みしていました。

 

 

さて、今回の講演会は、第一部が佐々木睦郎の講演、第二部が佐々木睦郎と難波和彦による対談となっていました。10分間の休憩をはさんで、双方約45分ずつの時間配分でした。後半には会場からの質疑応答もありました。1946年生まれの二人の講演、驚いたことに会場は、ほとんどが若い人たちで埋められていました。

 

佐々木睦郎の講演は、法政大学の最終講義に沿って展開されました。フレーム構造として「せんだいメディアテーク」(伊東豊雄)〉を、空間構造を「豊島美術館」(西澤立衛)、そして最後に「大阪芸術大学アートサイエンス学科新校舎」(妹島和世)と、「新青森県総合運動公園陸上競技場」(伊東豊雄)〉が紹介されました。

 

第一部

 

今回の講演会で、まず出されたのが下の表でした。「構造・構築・建築」からなる三段階論的弁証法です。そして構造デザインの二つの系譜を出しています。一方は骨組み構造の流れ、もう一方は空間構造の流れです。

 

 

右の図は、吉阪隆正の「生命の網の曼陀羅」です。

左は、それをヒントに佐々木が描いたもの

 

佐々木がかかわった仕事としては、「せんだいメディアテーク」と、「金沢21世紀美術館」がよく知られています。前者は伊東豊雄、後者は妹島和世+西沢立衛/SANAAです。ともに今では世界的な建築家です。

 

現在、建築倉庫では「構造展」が開催されており、「仙台メディアテーク」の模型が出ていました。構造模型と言っていいでしょう。

 

 

 

「せんだいメディアテーク」の構想時に伊東豊雄が提出したスケッチ

 

「せんだいメディアテーク」の構想時に伊東豊雄が提出したスケッチ

 

「せんだいメディアテーク」の実現段階で作成した構造概念図

 

アーカイヴスー1 仙台メディアテーク

 

以下、今回話題に出た佐々木睦郎のかかわったもの2点

 

アーカイヴスー2 金沢21世紀美術館

 

アーカイヴス-12 豊島美術館

 

第二部

以下、文責tonton

 

難波は、佐々木の優れたところは、歴史的に語ること。ほかの構造家、また建築家にも少ないし、いない。

佐々木は、代々木体育館は、高校生の頃、丹下健三の代々木体育館を観て、大変ショックを受け、後年、構造家になったと話す。

代々木は、合理的じゃない。テンションの中に曲げ剛性を持ち込む。

いわばハイブリット構造。

坪井善勝は「構造の美は合理の近傍にある」と言ったという。

 

佐々木は篠原一男との対談で、「非合理と目指しなさい」と言われた。

難波は、ルネサンス時代から、考える人と作る人が分離してきた。

 

マリオ・カルボというイタリアの歴史家がいる。

「アルファベットそしてアルゴリズム」という本で、「デジタルは、ルネサンスから500年続いた建築を変えた」という。

「デジタルターン」、これからはそういう時代。

 

イソザキは、「マニエラ」と言った。

ザハ・ハディト

フランク・ゲーリー

横浜客船ターミナルは動線でできている。

隈研吾批判。彼は「デジタルターン」ではない。

関西国際空港ターミナルは、空気と形のデジタルな対応。

変数が多くなって、処理するスピードが飛躍的に向上。

 

難波は、過去、「仙台メディアテーク」のシンポジウム時に、伊東さんは不機嫌だったという。「俺のイメージしていた建築とは違う、佐々木にやられた」と語った。これは大いなるすれ違いだ。

それから伊東は「建築は物質なんだ」と、それ以降、考え方を変えた。

佐々木は、「そんなフニャフニャしたもので建築ができるか」、緊張感のある強さがないと。

難波は、最初のスケッチがそのままでできたと考えるのは違うなと思った。

佐々木は「伊東さんはちょっと女性的なところがあるから・・・」と。

 

会場から

佐々木事務所の出身者で小規模の木造と格闘している人がいるが、佐々木さんはどうか?

基本的に木材は節があったりする。曖昧なものややりたくないという性格。集成材は性能がはっきりしているので、計算にのる。鉄骨と同じ。建築は実験できないし。

木村事務所で、徹底的に鍛えられた。地震が来た時、どうなるのか?

いろいろとたくさん経験して、これくらいならいいだろうと、自分で判断する。

先日亡くなった、法政大学名誉教授の川口衛は「全人格的な対応が設計だ」と言った。代々木体育館や、万博のお祭り広場を担当した人。

 

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