三浦しおんの「光」を読んだ! | とんとん・にっき

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最近、大森立嗣クンどうしてるかなと、ネットで検索したら、なんとしっかり映画を作っているじゃないですか。そりゃそうだよな、映画監督なんだから…。でも坊主になっていましたよ。なんでだ?1970年生まれの46歳。けっこういいオジサンです。大森南朋は弟ですが、こちらの方が一般的には知られています。と、ここで大森立嗣に深入りするわけではありません。ただ、次回作が、井浦新や瑛太が主演の「光」、今年の秋に公開予定、とだけ言っておきましょう。


大森立嗣監督の「光」、原作が三浦しをんの「光」だというので、大慌てで文庫本を読んでみました。三浦しをんの著作は、僕が読んだのは直木賞を受賞した「まほろ駅前多田便利軒」、ただの一冊だけです。「光」は「小説すばる」に連載され、単行本としては2008年11月に集英社より刊行されました。僕が読んだのは集英社文庫です。2013年10月25日に第1刷、なんと2017年6月6日には第7刷です。かなりなベストセラーです。ほとんど知りませんでした。


「光」のラスト…。

津波から20年が経ったころから、美浜島と関係があった人の間で、慰霊をしたいという話が持ちあがり、津忘れないためにもと、波の恐ろしさを3ヶ月間特別航路で運行することが決まった。南海子は、「行ってみたい」と夕飯の席で夫に言った。


デッキのスピーカーのスイッチが入り、男の声が案内を読み上げ始めた。「左手に見えますのが美浜島です。昭和62年5月6日深夜、美浜島は突然の津波に襲われ、島民271名の内266名が亡くなるという痛ましい事故が・・・」船は速度を落とす。海面に次々に花が投げこまれる。色鮮かな花びらは波の飲まれて沈んでいく。


美浜島は、暴力の痕跡を内包したまま、禍々しいまでの生命力で海のうえに再生していた。そこに生き、そこで死に、いまもそこにつながれているひとたちの、あらゆる同国を呑み込み、島は海中から身を起こす緑の巨人の背中のように、波間に厳然とあるのだった。


驚いたことに、この小説が「小説すばる」誌で連載を開始したのは2006年で、我々が目の当たりにした――あるいはテレビ画面を通して体験した東日本大震災による津波の、じつに5年前に書き起こされている、と解説者の吉田篤弘はいう。したがって、これは目の当たりにしたものを写しとったのではなく、すべて、著者の想像力によって紡ぎ出されたものだ、と続けます。これはすごいことです。


この本の第1章は、美浜島に育った中学生の信之とその彼女である美花、そして幼馴染の輔(たすく)、3人の島での閉塞的な暮らしと、突然美浜島に襲い掛かった津波の話に終始します。著者の想像力によって紡ぎ出されたものだという、津波の描写が圧巻です。

 

本のカバー裏には、以下のようにあります。

島で暮らす中学生の信之は、同級生の美花と付き合っている。ある日、島を大災害が襲い、信之と美花、幼なじみの輔、そして数人の大人だけが生き残る。島での最後の夜、信之は美花を守るため、ある罪を犯し、それは二人だけの秘密になった。それから二十年。妻子とともに暮らしている信之の前に輔が現れ、過去の事件の真相を仄めかす。信之は、美花を再び守ろうとするが―。渾身の長編小説。


三浦しをん:

1976年東京都生まれ。2000年「格闘するものに○」でデビュー。06年「まほろ駅前多田便利軒」で第135回直木賞を受賞。12年「舟を編む」で第9回本屋大賞を受賞。他の小説に「風が強く吹いている」「仏果を得ず」「政と源」など、エッセイに「悶絶スパイラル」「お友だちからお願いします」「本屋さんで待ちあわせ」などがある。


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