瀬戸内寂聴の「美は乱調にあり 伊藤野枝と大杉栄」を読んだ! | とんとん・にっき

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瀬戸内寂聴の「美は乱調にあり 伊藤野枝と大杉栄」(岩波現代文庫:2017年1月17日第1刷発行)を読みました。(前にも書きましたが)僕は、母から借りた瀬戸内晴美の「美は乱調にあり」を、たぶん昭和43年頃に読んでいましたので、再読ということになります。昭和43年というと、今から49年も前のことです。どうして母がこの本を買って持っていたのか、未だに不明です。僕は読んだことは読みましたが、内容はほとんど憶えていませんでした。

瀬戸内寂聴はこの本の「はじめに」にで、「400冊を超えているらしい自作の中で、ぜひ、今も読んでもらいたい本をひとつあげよと云われたら、迷いなく即座に、『美は乱調にあり』『諧調は偽りなり』と答えるだろう」と、書いています。「今、混迷を極めた時代にこそ、特に前途ある若い人たちに読んで欲しい。」と力説しています。


続けて、

ダダイスト辻潤とアナーキスト大杉栄という怪物二人と結婚し、二人の間に子供を7人も産み、関東大震災のどさくさまぎれに、大杉と甥の6歳の橘宗一と共に憲兵隊に連行され、甘粕大尉に虐殺された伊藤野枝の28歳の生涯を描いた。日蔭の茶屋で、大杉が嫉妬に狂った愛人の神近市子に首を刺されるまでを一巻として、「美は乱調にあり」を終わっている。


本の帯には「疾走する生。ほとばしる恋。」とあり、そして、本の裏表紙には、以下のようにあります。

「美はただ乱調にある。諧調は偽りである。」(大杉栄)

瀬戸内寂聴の代表作にして、伊藤野枝を世に知らしめた伝記小説の傑作が、続編「諧調は偽りなり」とともに文庫版で蘇る。婚家からの出奔、師・辻潤との同棲生活、「青鞜」の挑戦、大杉栄との出会い、神近市子を交えた四角関係、そして日蔭茶屋事件―。その傍らには平塚らいてうと「若い燕」奥村博史との恋もあった。まっすぐに愛し、戦い、生きた、新しい女たちの熱き人生。


昨年、栗原康の「村に火をつけ、白痴にになれ 伊藤野枝伝」を読みました。威勢のいいタイトルといい、 「あの淫乱女」など、センセーショナルな言葉があちこちに散りばめられています。しかし、過去の評伝などはしっかり押さえてあり、伊藤野枝を知るうえでは欠かせない著作だといえます。斎藤美奈子による朝日新聞の書評が、的を捉えていて見事でした。僕は斎藤の書評で、栗原の著作を知りました。



伊藤野枝[1895-1923]
◎大正時代のアナキスト。ウーマンリブの元祖ともいわれる。
◎福岡県に生まれ、14歳で一念発起し、上京。上野高等女学校に進学。卒業後、決められた縁組により地元で結婚するが、婚家を出奔し、女学校の恩師であった辻潤と暮らしはじめる。雑誌『青鞜』編集部で働き、平塚らいてうについで20歳で編集長に。セックス、中絶、売買春といったテーマから、人間の尊厳や生き方を問いなおす記事を書く(「貞操論争」「堕胎論争」「廃娼論争」)。辻とのあいだに2人の子どもをもうける。
◎大杉栄と出会い、21歳で大杉・妻・恋人との四角関係に身を投じる。大杉の気持ちが野枝に大きく傾くなか、恋人・神近市子が大杉を刺す(葉山日蔭茶屋事件)。事件後、大杉との絆を深めた野枝は、5人の子を産み育てながら、『青鞜』休刊後も評論や翻訳など旺盛な執筆活動を繰り広げる。関東大震災の混乱に乗じた甘粕正彦ひきいる憲兵隊に、大杉・甥とともに虐殺される(甘粕事件)。享年28歳。

jyaku 「諧謔は偽りなり」

岩波現代文庫

2017年2月17日第1刷発行

著者:瀬戸内寂聴

発行所:株式会社岩波書店




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「村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝」

2016年3月23日第1刷発行

著者:栗原康

発行所:株式会社岩波書店

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「美は乱調にあり」

昭和41年3月1日第1刷

著者:瀬戸内晴美

発行所:株式会社文藝春秋









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