3月中旬ころ、ある知人に、嵐山光三郎の「漂流怪人・きだみのる」のチラシと、刊行記念ワンナイト上映の渋谷実監督の「気違い部落」のチラシをもらいました。映画は残念ながら終わっていましたが、嵐山光三郎の「漂流怪人・きだみのる」の方は、ぜひ読むようにと勧められました、普段は人から勧められた本は読まないことにしているのですが、この本を読んでみて、きだみのるの破天荒な型破りの生き方に大きな感銘を受けました。そしてきだの代表作である「気ちがい部落周游紀行」を、発行元の冨山房まで行って購入しました。
そうこうしているうちに、朝日新聞に「放浪作家 型破りの生涯 評伝『きだみのる』 嵐山光三郎さん出版」という記事が載りました。
記事の書き出しは、以下の通りです。
八王子郊外の廃寺に暮らし、「ドブネズミ号」と名付けた愛車で全国を放浪した作家きだみのる。型破りの生涯を作家の嵐山光三郎さん(74)が評伝「漂流怪人・きだみのる」に著した。日本のムラ社会を鋭い視点で分析しつつ、はみだし者に熱いまなざしを注いだきだの人間像が伝わってくる。(朝日新聞:2016年3月31日)
「きだみのる」とは、どんな人なのでしょ う。
1895年、鹿児島県の奄美大島に生まれる。39歳のとき仏政府奨学生として渡仏し、パリ大で社会学や民俗学を専攻する。帰国後、「アテネ・フランセ」の語学教師になり、やがて八王子近郊の山村に居着く。地域共同体の構造や人間模様を鋭く分析したルポや 紀行文を数々発表。戦後知識人やジャーナリズムの世界に大きな影響を与えた。75年死去。
新聞からの引用を続けます。
背が高く、屈強な肉体のきだは一級の知識人でもあった。本名・山田吉彦としてファーブルの「昆虫記」を翻訳。パリ大でマルセル・モースに師事して社会学と民俗学を学んだ。戦後まもなく発表した「気違い部落周游紀行」は日本のムラ社会の行動原理を鮮やかに描き、当時の知識人に衝撃を与えた。過激なタイトルながらも毎日出版文化賞を受賞。映画にもなった。
さて、「漂流怪人・きだみのる」(小学館:2016年2月21日初版第1刷発行)ですが、本の帯には以下のようにあります。青年嵐山が出会った「最大の怪物」とは?明治・大正・昭和を生き抜いた、ハテンコウ文化人の痛快評伝!
そして帯の裏には
きだみのるはファーブル「昆虫記」の訳者で、戦中「モロッコ紀行」を書いたブライ派の学者である。雑誌「世界」に≫連載した「気違い部落周游紀行」はベストセラーになり、渋谷実監督、淡島千景主演(松竹)で映画化され、大ヒット。嵐山は雑誌「太陽」の編集部員であった28歳のとき、きだみのる(75歳)と、謎の少女ミミくん(7歳)と一緒に取材で各地をまわった。フランス人趣味と知識人への嫌悪。反国家、反警察、反左翼、反文壇で女好き。果てることのない食い地。人間のさまざまな欲望がからみあった冒険者。きだ怪人のハテンコウな行状に隠された謎とはなにか。
嵐山光三郎:
1942年静岡県生まれ。國學院大學卒業後、平凡社に入社。「別冊太陽」「太陽」編集長を歴任後、独立。1988年「素人包丁記」で講談社エッセイ賞、2000年「芭蕉の誘惑」でJTB紀行文学大賞、06年「悪党芭蕉」で泉鏡花文学賞と読売文学賞を受賞。ほかに「文人悪食」「追悼の達人」「文人悪妻」「不良定年」など著書多数。
―冨山房百科文庫31―
1981年1月30日第1刷発行
2016年3月7日第11刷発行
著者:きだみのる
発行所:冨山房
「漂流怪人・きだみのる」
著者:嵐山光三郎
発行所:株式会社小学館
宣伝チラシ
映画「気違い部落」
ワンナイト上映
神保町シアター
監督:渋谷実
原作:きだみのる
脚本:菊島隆三
1957年松竹映画
(上映時間134分)
出演:淡島千景
伊藤雄之助
伴淳三郎
水野久美
藤原釜足
森繁久彌他