黒沢清監督の「岸辺の旅」を観た! | とんとん・にっき

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「岸辺の旅」、映画館の案内チラシには、以下のようにあります。

3年間、失踪していた夫が突然帰り「俺、死んだよ」と妻に告げる。妻は彼を静かに受け入れ、夫が過ごした時間をめぐる、夫婦の旅がはじまる。生と死、夫と妻。はざまの心情を淡く切なく描き出す。映画作家・黒沢清の到達点というべき一作。


「岸辺の旅」は2015年カンヌ国際映画祭ある視点部門監督賞を受賞して話題になりましたが、他に映画誌「キネマ旬報」では2015年に公開された日本映画部門で5位、深津絵里は主演女優賞(「寄生獣 (映画)寄生獣 完結 」と合わせて受賞)を受賞します。第70回毎日映画コンクールではやはり2015年に公開された作品で「日本映画優秀賞」を受賞しています。賞をもらったからいい映画というわけではないですが、とりあえず観ないことには話にならない、ということで、たまたま上映していた下高井戸シネマに観に行ってきました。


この映画を観終わったあと、なんか腑に落ちない印象がぬぐえませんでした。もうちょっと夫婦間の物語があるのか、あるいは純愛劇かと僕は勝手に思っていました。ある日突然失踪していた夫が帰ってきて、俺はすでに死んだ身だと説明されても、妻はそう簡単には納得できません。夫から、思い出の地を巡る旅に出ようと持ち掛けられ、納得のいかないままに二人で旅に出ます。始めに新聞配達業を営む老人の所へ、でも彼も死んだ人間で、突然消えてしまいます。 


次に訪ねたのは夫婦の経営する食堂、二人で店の手伝いをしているうちに、2階の大広間にあったピアノを見つけて弾いてしまいます。勝手に触るなと食堂の妻に怒鳴りつけられたが、そのピアノは食堂の妻の死別した妹が弾いていたピアノだったと言われて、別の感慨を持ったりします。また、女性から夫にあてた手紙を見つけて、相手の女性に会いに行って詰問したりもしますが、結果的に自己嫌悪に陥ります。そして山奥の農村に行き、夫が農村の人々に向けて私塾を開いていたことを知ります。しかし、二人は旅の終わりの場所にやってきます。


深津絵里、好きなんですけど、映画のデビュー作かな、「(ハル)」(1996年)や、「博士の愛した数式」(2006年)を観ましたが、やはり「悪人」(2010年)が素晴らしかった記憶があります。しかし、今回の「岸辺の旅」は、浅野忠信のセリフのさりげなさに比べて、セリフも棒読みのようだし、なんとなく暗くて、深津絵里の演技には僕は納得がいきませんでした。死んだ人相手なので、それは仕方がないことかもしれませんが。脇役ですが、小松政夫や柄本明は安心して見ていられるし、蒼井優も控えめな演技でよかったと思います。作品としても、「映画作家・黒沢清の到達点」といえるかどうか、大いに疑問です。

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以下、とりあえず「シネマトゥデイ」より引用しておきます。

チェック:『アカルイミライ』がパルムドールにノミネートされた経験もある黒沢清監督が、湯本香樹実が2010年に上梓した小説を映画化。3年間行方をくらましていた夫がふいに帰宅し、離れ離れだった夫婦が空白の時間を取り戻すように旅に出るさまを描く。脚本は『私の男』などで知られる宇治田隆史が黒沢監督と共同で担当。『踊る大捜査線』シリーズなどの深津絵里と、『バトルシップ』、『マイティ・ソー』シリーズなどでハリウッド進出も果たした浅野忠信が夫婦愛を体現する。

ストーリー:3年間行方不明となっていた夫の優介(浅野忠信)がある日ふいに帰ってきて、妻の瑞希(深津絵里)を旅に誘う。それは優介が失踪してから帰宅するまでに関わってきた人々を訪ねる旅で、空白の3年間をたどるように旅を続けるうちに、瑞希は彼への深い愛を再確認していく。やがて優介が突然姿を現した理由、そして彼が瑞希に伝えたかったことが明らかになり……。

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「岸辺の旅」公式サイト


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