カフカの「絶望名人カフカの人生論」を読んだ! | とんとん・にっき

カフカの「絶望名人カフカの人生論」を読んだ!

 

カフカの「絶望名人カフカの人生論」(新潮文庫:平成26年11月1日発行、令和2年2月20日7刷)を読みました。

 

「いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです」これは20世紀最大の文豪、カフカの言葉。日記やノート、手紙にはこんな自虐や愚痴が満載。彼のネガティブな、本音の言葉を集めたのがこの本です。悲惨な言葉ばかりですが、思わず笑ってしまったり、逆に勇気付けられたり、なぜか元気をもらえます。誰よりも深く落ち込み、誰よりも情けない弱音をはいた、巨人カフカの元気がでる名言集。

 

カフカ以降の作家で、カフカの影響をまったく受けずに済んでいる人は、ほとんどいないと言っていいでしょう。多くの作家たちがカフカを尊敬しています。

 

「彼(カフカ)は、もはや断じて追い越すことのできないものを書いた。・・・この世紀の数少ない偉大な、完成した作品を彼は書いたのである」(ノーベル文学賞作家エリアス・カネッティ)

「フランツ・カフカが存在しなかったとしたら、現代文学はかなり違ったものになっていたはずだ」(安倍公房)

「カフカとはひとつの巨大な美的革命そのものです。芸術的軌跡そのものです」(ミラン・クンデラ)

「ひとが別様に書くことができると理解させてくれたのはカフカだった」(ガルシア=マルケス)

「現代の、数少ない、最大の作家のひとりである」(サルトル)

「リルケのような詩人たち、あるいはトマス・マンのような小説家たちも、彼(カフカ)に比すれば・・・石膏の聖人像みたいなものだ」(ナボコフ)

「彼(カフカ)は現代で最も重要な作家だと思う。彼が書いたことを抜きに今を生きることはできない」(映画監督ウディ・アレン)

 

絶望名人カフカの人生論 目次

第一章 将来に絶望した!

  1 倒れたままでいること

  2 あらゆる困難がぼくを打ち砕く

  3 あらゆることが怖くなる

  4 頑張りたくても頑張ることがない

  5 他の人はやすやすやってのけることを、自分はできない

  6 目標に到達する難しさ

  7 手にした勝利を活用できない

  8 人生のわき道にそれていく

第二章  世の中に絶望した!

  9 ひとりでいれば何事も起こらない

  10 地下室のいちばん奥の部屋で暮らしたい

  11 孤独さが足りない、さびしさが足りない

  12 ここより他の場所

第三章 自分の身体に絶望した!

  13 ぼくの知っている最も痩せた男

  14 こんな身体では何ひとつ成功しない

  15 父親のたくましさと、自分のひ弱さ

  16 この身体で生きることの心細さ

  17 心配がふくれあがって本当の病気に

  18 気苦労が多すぎて、背中が曲がった

  19 散歩をしただけで、疲れて三日間何もできない

第四章 自分の心の弱さに絶望した!

  20 強さはなく、弱さはある

  21 やる気がすぐに失せてしまう

  22 重いのは責任ではなく、自分自身

  23 死なないために生きるむなしさ

  24 過去のつらい経験を決して忘れない

  25 自分を信じて、磨かない

第五章 親に絶望した!

  26 父親の前に出ると自信が失われる

  27 罪はないのに罰はやってくる

  28 巨人としての父親

  29 まったく嚙み合わない価値観

  30 親からの、見当違いな励まし

  31 「おまえのやることは必ず失敗する」と脅す親

  32 自立を願いながら、子供を支配し続ける矛盾した親

  33 親の影響力の大きさ

  34 やさしい母親は、おそろしい父親の手下にすぎない

  35 親からの反論

第六章 学校に絶望した!

  36 学校では劣等生と決めつけられた

  37 母親にとって「ひとつの悲しい謎となった」

  38 教育は害毒だった

  39 何度成功しても自信が湧かず、ますます不安が高まる

第七章 仕事に絶望した!

  40 生活のための仕事が、夢の実現の邪魔をする

  41 会社の廊下で、毎朝絶望に襲われる

  42 仕事に力を奪われる

  43 仕事をなまけているのではなく、怖れている

  44 出張のせいで、だいなしに

  45 社会的地位にはまったく関心なし

第八章 夢に絶望した!

  46 なぜ好きな仕事で身を立てようとしないのか?

  47 自分のやりたいことでは、お金にならない

  48 書けば失敗、書かなければ箒で掃き出されて当然

  49 いろいろなことが、夢の実現を邪魔する

  50 書くどころか、ものを言うこともできない

  51 途方にくれて、たえず同じことを

  52 悪作の証明

  53 夢がすべてだが、その夢もあてにならない

第九章 結婚に絶望した!

  54 結婚することにも、しないことにも絶望

  55 愛せても、暮らせない

  56 「普通」にあこがれる

  57 ふりまわされる女性

  58 三度目の正直も起きず

  59 結婚しなかった理由

  60 結婚こそが現実入門

  61 女性に近づくだけで無数の傷が

第十章 子供を作ることに絶望した!

  62 子供を持ちたいが、持てない

  63 父親になるという冒険

  64 自分の血を遺していいのか?

  65 自分に似た子供への嫌悪

第十一章  人づきあいに絶望した!

  66 人とつきあうことの圧迫感

  67 人といると、自分の存在が消えていく

  68 二人でいるほうが、もっと孤独

  69 友人との関りに希望はない

第十二章 真実に絶望した!

  70 真実の道には、人をつまずかせる綱が

  71 嫌がっても迫ってくる、受け入れがたい真実

  72 目の前の現実はすべて幻影

第十三章 食べることに絶望した!

  73 極端な食事制限

  74 カフカの食卓

  75 もさぼり食いたい衝動

  76 食べたいけど、食べられるものがない

第十四章 不眠に絶望した!

  77 眠れないし、眠りの質が悪い

  78 不眠の夜のラッパ

  79 永遠の不眠

  80 不眠と頭痛で白髪になった

  81 なぜ眠れないのか?

第十五章 病気に絶望・・・していない!

  82 ついに本当に病気になる

  83 病気は武器

  84 骨折という美しい体験

  85 心の苦しみが病気の原因

  86 結核=母親のスカート

あとがき 誰よりも弱い人

文庫版編訳者あとがき

解説 山田太一

 

フランツ・カフカ:

オーストリア=ハンガリー帝国領のプラハで、ユダヤ人の商家に生まれる。プラハ大学で法学を修めた後、肺結核に斃れるまで実直に勤めた労働者障害保険協会での日々は、官僚機構の冷酷奇怪な幻像を生む土壌となる。生前発表された「変身」、死後注目を集めることになる「審判」「城」等、人間存在の不条理を主題とするシュルレアリスム風の作品群を残している。現代実像主義文学の先駆者。

 

編訳者 頭木弘樹:

文学紹介者。筑波大学卒。編訳書に「絶望名人カフカの人生論」「絶望名人カフカ×希望名人ゲーテ」。編著に「決定版カフカ短編集」など。

 

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