波戸岡景太の「スーザン・ソンダグ 『脆さ』にあらがう思想」を読んだ! | とんとん・にっき

波戸岡景太の「スーザン・ソンダグ 『脆さ』にあらがう思想」を読んだ!

 

波戸岡景太の「スーザン・ソンダグ 『脆さ』にあらがう思想」(集英社新書:2023年10月22日第1刷発行)を読みました。

 

進歩という名の暴力に対する、

「知性」の闘い──
戦争、病、映像文化、ケア、ジェンダー、

明日を生き抜くための批評を再発見する。

推薦コメント:
ソンタグとはいったい何であるのかに向き合い、読者の理解を促すべく仕掛けと工夫によって入門書として着地させた好著。
────五野井郁夫氏(高千穂大学教授、政治学者・『山上徹也と日本の「失われた30年」(池田香代子氏との共著)』、『「デモ」とは何か――変貌する直接民主主義』)
スーザン・ソンタグを再びカッコよくするための試みである、この本はたぶん入門書になるにはカッコよすぎるのだ。
────北村紗衣氏(武蔵大学教授、批評家・『批評の教室』『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』『英語の路地裏』)

おもな内容:
”反解釈・反写真・反隠喩”で戦争やジェンダーといった多岐にわたる事象を喝破した、批評家スーザン・ソンタグ。
あらゆる脆さにあらがう、その「カッコよさ」は、しかし生誕から90年を迎え、忘れかけられている。
本書は「《キャンプ》についてのノート」で60年代アメリカの若きカリスマとなったデビューから、「9・11事件」への発言で強烈なバッシングの対象になった晩年までの生涯とともに、ソンタグという知性がなぜ読者を挑発し続けるのかを鮮やかに描き出す。
自身のマイノリティ性や病にあらがい到達した思想の本質とは。


スーザン・ソンタグの言葉

・物書きたるもの、意見製造機になってはならない。

・解釈は、世界を貧しくし、消耗させる。

・写真家の意図は、写真の意味を決定しない。

・カメラは銃を理想化したものであるから、誰かを撮影することは理想化された殺人――悲しく、怯えた時代にぴったりの、ソフトな殺人を犯すことなのである。

・悪趣味という趣味の良さ、なるものも存在する。

・「キャンプ」は優しい感情だ。

目次
はじめに註
第1章 誰がソンタグを叩くのか

    知性とバッシング

    知識人ソンタグの履歴

    意見製造機への苛立ち

    生身の人間としてのテロリスト
第2章 「キャンプ」と利己的な批評家

    脆さと苦痛を考える

    カッコいい、だから叩かれる

    ヒップな文化の「やんちゃな甥っ子」

    「カッコ悪い」から「カッコいい」を発見する感性

    教科書化するキャンプ

    キャンプを裏切る

    「反」=「アゲインスト」は利己的である
第3章 ソンタグの生涯はどのように語られるべきか

    これからのソンタグの話をしよう

    ドキュメンタリー番組「スーザン・ソンタグの生涯」

    評価を二分するソンタグ像

    「才女」とは誰か?

    ソンタグのアフォリズム
第4章 暴かれるソンタグの過去

    漱石を読むソンタグ

    翻訳としての解釈

    ソンタグのなかのヴァルネラブルな子ども

    他者の「脆さ」に関与すること

    (不)誠実な鑑賞者
第5章 『写真論』とヴァルネラビリティ

    写真にあらがう

    惨劇と絶滅を撮ること

    プラトンの洞窟で

    批評家ソンタグの「暗順応」

    ダイアン・アーバスの暗いアメリカ
第6章 意志の強さとファシストの美学

    「意志」の両義性

    「意志の勝利」を断罪する

    ファシストの美学

    三島由紀夫とバタイユの美学

    大真面目なことを大真面目に

第7章 反隠喩は言葉狩りだったのか

    ヴァルネラビリティを安易に語らないための準備

    隠喩のコレクション

    大江健三郎に向けた「反隠喩」

    利己と9・11

    ソンタグの二重のフラストレーション
第8章 ソンタグの肖像と履歴

    「人間失格」とベンヤミンの写真

    「女性」が被写体になるとき

    「夫」フィリップ・リーフとの生活

    研究者としてもキャリア

    「強さ」の解釈にあらがう
第9章 「ソンタグの苦痛」へのまなざし

    ある写真家の人生

    ソンタグの一人芝居?

    ハラスメント疑惑と隠喩

    息子デイヴィッドの「ケアラーの経験」

    反隠喩、ふたたび

第10章 故人のセクシュアリティとは何か

    追悼文への苦言

    「大きなお世話ですよ!」

    「好色」という隠喩

    鑑賞者の側のセクシアリティ

    誰かを愛する、とはどういうことか
第11章 ソンタグの誕生

    「仮面の告白」と「訪中計画」

    ギャツビーを語るニックの「反批評」

    過去の中に予見された未来

    自殺した「もう一人のスーザン」

    未来の苦痛は誰のもの?
終章 脆さへの思想

    批評家としての覚悟

    反知性主義者的な知性の闘い

    テクノロジーの恩恵にあらがう

    ヴァルネラブルであること

    盾としての批評
おわりに



波戸岡景太(はとおか・けいた):
1977年、神奈川県生まれ。
専門はアメリカ文学・文化。博士(文学)〈慶應義塾大学〉。
現在、明治大学教授。
著書にThomas Pynchon’s Animal Tales: Fables for Ecocriticism(Lexington Books)、『映画ノベライゼーションの世界』(小鳥遊書房)、『ラノベのなかの現代日本』(講談社現代新書)など。
訳書にスーザン・ソンタグ『ラディカルな意志のスタイルズ[完全版]』(管啓次郎との共訳、河出書房新社)など。