野矢茂樹の「言語哲学がはじまる」を読んだ! | とんとん・にっき

野矢茂樹の「言語哲学がはじまる」を読んだ!

 

野矢茂樹の「言語哲学がはじまる」(岩波新書:2023年10月20日第1刷発行)を読みました。

 

フレーゲ、ラッセル、ウィトゲンシュタイン

言語論的転回

切り拓いた3人の天才たち

何を考えていたのか

 

フレーゲからラッセル、そしてウィトゲンシュタインへ――二十世紀初頭、言葉についての問いと答えが重なりあい、つながりあっていった。天才たちの挑戦は言語哲学の源流を形作っていく。その問いを引き受け、著者も根本に向かって一歩一歩考え続ける。読めばきっとあなたも一緒に考えたくなる。とびきり楽しい言葉の哲学。

 

はじめに
第一章 一般観念説という袋小路
 1 どうして言葉は新たな意味を無限に作り出せるのか
  新たな意味の産出可能性という問題
  言語は有限の語彙と文法からなる
 2 「猫」の意味は何か
  「富士山」と「猫」
  指示対象説
 3 個別の猫と猫一般
  太郎は「猫」の意味が分からない
  個別性と一般性のギャップという問題
 4 心の中に猫の一般観念を形成する?
  「猫」は猫の一般観念を指示するという考え
  批判その1――一般観念とは何か
  批判その2――一般観念説はコミュニケーションを不可能にする
  批判その3――観念もまた個別的でしかない
  どこで引き返せばよかったのか
第二章 文の意味の優位性
 1 私たちはただ対象に出会うのではなく、事実に出会う
  『論理哲学論考』の出だし
  語の意味から出発するのではなく、文の意味から出発する
 2 語は文との関係においてのみ意味をもつ
  要素主義
  銘記されるべきは、完全な文の全体
 3 文と事実の関係
  文は事実の名前か
  言葉と世界の基本的関係は真偽
 4 述語を関数として捉える
  「……は猫だ」の意味
  命題関数
  曖昧な述語
  関係述語
  命題関数を考えるメリット
  命題関数と文脈原理
 5 固有名の意味と文脈原理
  指差して名づければ指示対象が定まるというわけではない
  名前を尋ねることができるために、何を知っていなければならないのか
 6 新たな意味の産出可能性の問題に答える
  やっぱり要素主義の方がいい?
  そんなことはない
  積み木とレゴブロック
  「猫はよく寝る」と「猫が寝ている」
  「猫が富士山に登った」
 7 合成原理
  語の意味から文の意味へ
  合成原理と文脈原理は矛盾している?
  子どもの言語学習
第三章 「意味」の二つの側面
 1 文の「意味」
  驚くべき帰結
  「意味」の意味
 2 指示対象と意義
  外延と内包
  外延と内包という考え方を拡張する
  文の意義
  述語の意義
 3 固有名の意義
  同一性を主張する文の謎
  信念文の謎
  私はフレーゲの解答についていけない
  フレーゲ的枠組
第四章 指示だけで突き進む
 1 日本の初代大統領は存在する?
  指示対象が存在しない固有名は無意味か
  「日本の初代大統領」という表現は無意味か?
  フレーゲの解答
  ラッセルの解答
 2 記述理論
  定冠詞“the”の意味
  もうなんでもかんでも存在すると言わなくていい
  確定記述と記述理論
 3 本当の固有名
  同一性問題と信念文の問題への応答
  それは本当に固有名なのか
  固有名と述語
  「これ」
  本当の固有名を巡る問題と解答
 4 文の意味と命題
  文の指示対象
  命題はそれを判断する人が構成する
  ウィトゲンシュタインの批判
第五章 『論理哲学論考』の言語論
 1 『論理哲学論考』の構図
  『論理哲学論考』のめざしたもの
  言語と思考
 2 言語が可能性を拓く
  ラッセルの誤解
  事実から対象を取り出して可能的な事態に組み立て直す
  対象を組み立て直すには言語が必要
 3 論理形式と論理空間
  対象を分節化するには可能性を了解していなければならない
  対象の論理形式は語の論理形式から把握される
  為すべきは説明ではなく解明
  論理形式の理解
  全体論的言語観
 4 論理空間と文の意味
  論理空間の構成
  文の意味を論理空間を用いて規定する
  要素文と真理関数
 5 フレーゲ、ラッセルとの対比
  指示対象と意義
  文の構造を捉えねばならない
 6 フレーゲからの挑戦に答える
  単純な対象
  同一性問題
  信念文の問題
 7 『論理哲学論考』から『哲学探究』へ
  要素文同士の論理的関係
  静的言語観から動的言語観へ
 注
 おわりに
 索 引

 

野矢茂樹:
1954(昭和29)年,東京都に生まれる.東京大学大学院博士課程単位取得退学.東京大学大学院総合文化研究科教授を経て,現在,立正大学文学部教授.専攻は哲学.
著書―『哲学の謎』(講談社現代新書,1996年)
   『哲学・航海日誌』(春秋社,1999年/中公文庫,2010年)
   『『論理哲学論考』を読む』(哲学書房,2002年/ちくま学芸文庫,2006年)
   『入門! 論理学』(中公新書,2006年)
   『語りえぬものを語る』(講談社,2011年/講談社学術文庫,2020年)
   『心という難問』(講談社,2016年)
   『まったくゼロからの論理学』(岩波書店,2020年)
   『『哲学探究』という戦い』(岩波書店,2022年)
訳書―ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』(岩波文庫,2003年)
   ほか多数.

 

朝日新聞:2024年1月20日