原田ひ香の「図書館のお夜食」を読んだ! | とんとん・にっき

原田ひ香の「図書館のお夜食」を読んだ!

 

原田ひ香の「図書館のお夜食」(ポプラ社:2023年6月19日第1刷発行、2023年7月12日第3刷)を読みました。

 

わからないことだらけの、なかなか不思議な小説です。

 

乙葉は、東北地方のターミナル駅ビルの中の書店に勤めていた。

本に関する仕事に就きたい・・・それがずっと乙葉の夢だった。大学では国文学を専攻し、近現代文学のゼミで太宰治を題材に卒論も書いた。国語の教員と書道教諭の免許も取った。本当は図書館員の資格も取りたかったが、地方から上京し、一人暮らしをしている身の上ではそこまで手が回らなかった。奨学金までは借りていないが、ぎりぎりの家計の中から両親が仕送りをしているのを知っていたので、アルバイトで生活費を稼いでいたのだ。

地元の教員採用試験に落ちたあと、出版社、取次会社、大手書店・・・思いつく限りの「本に関係する仕事」の就職活動をしたけれど、どこも落ちてしまった。大学から紹介されたメーカーには通ったものの、どうしても「本」に関わりたくて、アルバイトでもいいから、とメーカーの内定を蹴った。地元に戻り、契約社員の書店員になった。

面接では「小説が好きなんです!」と熱く主張して、幸いにも文芸部門に配属された。駅ビルの中の書店の仕事は楽しかったけど、だんだん身も心も疲弊してしまった。サービス残業は当たり前だし、給料も低すぎた。

乙葉は就職してからずっと、SNSに匿名の書店員として投稿していた。最初の頃は仕事について希望に満ちた言葉ばかりだったのに、気がつくとつい、愚痴や悩みをこぼすことが多くなっていた。仕事を辞めようなと思っていた時に、一通のダイレクトメッセージが来た。

 

「三千円の使いかた」「ランチ酒」の原田ひ香が描く、
本×ご飯×仕事を味わう、心に染みる長編小説。

 

秘密を抱え、本に翻弄され、

今日も美味しいご飯に癒される。

東北の書店に勤めるもののうまく行かず、書店の仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書は集められた、”本の博物館”のような図書館だった。開館時間が夕方7時〜12時までで、まかないとして”実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったが…。

 

すべてをさらけださなくてもいい。
ちょうどよい距離感で、
美味しいご飯を食べながら、
語り合いたい夜がある

 

原田ひ香:

1970年、神奈川県生まれ。2005年「リトルプリンセス2号」でNHK創作ラジオドラマ大賞受賞。07年「はじまらないティータイム」で第31回すばる文学賞受賞。「三千円の使いかた」で宮崎本大賞受賞。他の著書は「老人ホテル」、「財布は踊る」、「古本食堂」、「一橋桐子(76)の犯罪日記」、「ランチ酒」シリーズ、「まずはこれ食べて」、「口福のレシピ」など多数。

 

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朝日新聞:2023年8月26日