O・ヘンリーの「賢者の贈りもの」を読んだ! | とんとん・にっき

O・ヘンリーの「賢者の贈りもの」を読んだ!

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O・ヘンリーの「賢者の贈りもの」(新潮文庫:平成26年12月1日発行、令和2年11月20日4刷)を読みました。新潮文庫の「名作新訳コレクション」を知ったことによります。絵本「賢者のおくりもの」は、冨山房の社長からいただいたもので、以前から持っています。

 

クリスマス、若い夫婦に感動の奇跡が訪れる――。
アメリカの短篇を代表する作家の名作16作品を新訳で! まさに珠玉、シリーズ第一集。

デラはおんぼろカウチに身を投げて泣いていた。明日はクリスマスというのに手元にはわずか1ドル87セント。これでは愛する夫ジムに何の贈りものもできない。デラは苦肉の策を思いつき実行するが、ジムもまた、妻のために一大決心をしていた――。
若い夫婦のすれ違いが招いた奇跡を描く表題作ほか、ユーモラスな「赤い酋長の身代金」「千ドル」など、選り抜きの傑作を集めた新訳版。

目次
賢者の贈りもの
春はアラカルト
ハーグレーヴズの一人二役
二十年後
理想郷の短期滞在客
巡査と讃美歌
水車のある教会
手入れのよいランプ
千ドル
黒鷲の通過
緑のドア
いそがしいブローカーのロマンス
赤い酋長の身代金
伯爵と婚礼の客
この世は相身互い
車を待たせて
訳者あとがき

 

以下、「訳者あとがき」(小川高義)から。

O・ヘンリーといえば、言わずと知れたアメリカの短篇を代表する作家――であるのだが、あまりに知られすぎて不幸だったのではないかと思える。しっかり読まないうちに知ったつもりになってしまう。

作品の舞台となるのは、まずニューヨークであることが多い。O・ヘンリーが「地下鉄上のバグダット」と呼んだ大都会、すなわちハドソン川、イースト川という「水にはさまれた」細長いマンハッタンの、20世紀初頭の暮らしがタイムカプセルになっている。

O・ヘンリーと聞いてすぐに思いつくのは「どんでん返し」のトリックだろう。話の最後にひねりを利かせた予想外の落ちがある。

いくつもの短篇があって、いくつかの定型がある。ロマンスもの、人情ものといった主題からも、ニューヨーク、西部といった舞台設定からも、金持ち、貧乏人といった人物像からも、たしかにパターン化する傾向は見てとれる。だが、これだけ多くの作品のそれぞれに唯一無二の個性を求めるのは無理なことだ。それよりは作者の話芸、職人芸を楽しんだほうがよい。

「O・ヘンリーは、ほのぼのとした心あたたまる物語を書いた人」という思い込みは避けるべきではなかろうか。たとえば、心あたたまる代表格のように思われている「賢者の贈りもの」。もちろん、そのように読むこともできる。そのように読むのがよいのかもしれない。しかし皮肉な偶然にもてあそばれる人間、と読めば暗い話にもある。

そのように見た上で、なお作者は人間を突き放さない。とんちんかんな贈りものを交換する若い男女を、たしかに愚かしいと判じながらも、その馬鹿な話を肯定してみせる。ほかの作品でも、筋書きそのものは馬鹿な話のオンパレードかもしれない。だが、そういう馬鹿をやらかしている人間に、まあ、こんなものだよ、という目を向けてやる。この作家のユーモア、ペーソスの基盤には、そんな「定型」があるのではないか。すなわち馬鹿な話の肯定――。


O・ヘンリー(1862-1910)
アメリカ生れ。乱脈経営だった銀行の出納係を退職後、横領罪で告訴され真相不明のまま服役。獄中で小説を書き始める。出獄後は短編の名手としてニューヨークで活躍。「最後のひと葉」「賢者の贈りもの」「いそがしいブローカーのロマンス」「二十年後」など、十年間で約二百八十の短編を著した。

小川高義
1956年、神奈川県生まれ。東京工業大学名誉教授。翻訳家。ジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』『その名にちなんで』『見知らぬ場所』『低地』、ジョン・アーヴィング『また会う日まで』、トム・ハンクス『変わったタイプ』など訳書多数。著書に『翻訳の秘密』。

 

絵本「賢者のおくりもの」

1983年12月3日第1刷発行

2005年10月29日第25刷発行

発行所:冨山房

貧しいジェイムズ・ディリンガム・ヤング夫妻が相手にクリスマスプレゼントを買うお金を工面しようとする。夫のジムは、祖父と父から受け継いだ金の懐中時計を大切にしていた。妻のデラは、その金時計を吊るすプラチナの鎖を贈り物として買うかわりに、夫妻が誇るデラの美しい髪を、髪の毛を買い取る商人マダム・ソフロニーの元でバッサリ切り落とし、売ってしまう。一方、夫のジムはデラが欲しがっていた鼈甲を買うために、自慢の懐中時計を質に入れてしまっていた。物語の結末で、この一見愚かな行き違いは、しかし、最も賢明な行為であったと結ばれている。

(以上、ウィキペディアによる)

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