イ・チャンドン監督・脚本の「オアシス」を観た! | とんとん・にっき

イ・チャンドン監督・脚本の「オアシス」を観た!

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イ・チャンドン監督の「オアシス」(2002年韓国公開)を観ました。TUTAYAでDVDを借りて観ました。まったくの偶然です。「オアシス」というタイトルが、なんとなく聞いたことがあるように思ったので、借りたのでしょう。それにしてもこの映画は、韓国映画史上、歴史に残るであろう素晴らしい、いい映画でした。こんな映画は、なかなか日本ではできません。ましてやハリウッドでもできません。韓国だからできた映画です。ソル・ギョングとムン・ソリ、二人の迫真の演技がなんともはや見事です。世の中から疎外され、拒絶されたもの同士、二人のいわば究極の愛の物語と言えるでしょう。こうした障害者を題材にした映画は、たぶん、これからもできないだろうと思います。


2年6ヶ月の刑を終えて刑務所から出所したばかりの青年ジョンドゥ(ソル・ギョング)が、引っ越してしまった家族を捜すところから、この物語は始まります。食料品店で豆腐にかぶりつくジョンドゥ。刑期を終えた人が身も心も潔白になるように白いものを食べるという韓国の風習だそうです。家族が見つからず、一文なしのジョンドゥは無銭飲食をして逮捕され、迎えにきた弟と家に帰りますが、家族は誰も快く迎えてくれません。むしろジョンドゥの帰宅を疎ましく思っていました。実は兄の身代わりで犯人となり、刑に服したのでした。それなのに、家族はジョンドゥに冷たいのでした。強姦の前科があることもさることながら、貧乏揺すりや鼻すすりなど、チック症状をつづけ、言うことなすことトンチンカンなジョンドゥです。食堂の配達もちゃんとできない、兄の自動車工場の手伝いもちゃんとできません。はてはお客の車を勝手に乗り回したりします。ジョンドゥは、社会に適応できないのです。


ある日ジョンドゥは花束を持って、ひき逃げして死なせてしまった被害者の遺族を訪れます。遺族は引っ越しの最中で、部屋にはコンジュ(ムン・ソリ)という若い女性だけが残されていました。彼女は脳性麻痺のために手足が不自由で、言葉にも障害を抱えていました。手足は折れ曲がり、硬直し、表情はこわばり、視点は定まらない。隣家の夫婦に金を渡して彼女の世話をみてもらっていましたが、十分な世話をしているようには見えません。ジョンドゥはコンジュに興味を持ちます。隣家の夫婦が彼女の部屋へ出入りするときに鍵を植木鉢の下に置いているのを見て、その鍵で彼女の部屋に入り込みます。話しているうちにコンジュの身体をまさぐり、身体を奪おうとしますが、驚いたコンジュは必死に抵抗し、気絶してしまったので、ジョンドゥは浴室で彼女に水をかけて目覚めさせた後に退散します。


コンジュの兄夫婦は、コンジュ名義で障害者用の快適なマンションを低家賃で手に入れ、コンジュは元の古いアパートに置いたまま、自分たちだけで快適に暮らしています。役人が検査に来るときだけ、コンジュと同居しているように見せかけるために迎えにきたりします。そんな兄夫婦は、家族が多いために、家ではセックスができないので、コンジュの家に来てセックスを始めたりもします。家に戻ったコンジュは、寂しさのあまり、ジョンドゥが残していった電話番号が書いてある紙を取り出し、電話をかけます。それがきっかけでジョンドゥはコンジュの家を度々訪れるようになり、コンジュを「姫」と呼び、ジョンドゥは「将軍」と呼ばれ、二人の仲は次第に深まります。


デートを重ね、愛を育む二人に対して世間は冷たい。二人で街のレストランへ入ろうとすると、店員がコンジュの大きく歪んだ顔を見て、他に客がいるにも拘わらず、店は終わったと言って、二人を追い出したりもします。明らかに障害者差別です。ジョンドゥの母親の誕生日を祝う会に、親戚中の人が集まっています。そこへジョンドゥはコンジュを車椅子に乗せて連れて行きます。家族はあからさまに嫌な顔をします。呼ばれてないものを、なぜ連れてきたのかと。記念写真を撮るときも、勝手に写場に入ってきて、追い返されてしまったりもします。ある日、デートの後、ジョンドゥはコンジュを家まで送り届けます。ジョンドゥが「帰るよ」と言うと、コンジュは「一緒に寝てくれ」と言います。おずおずと彼女の寝ているベッドにジョンドゥは入り込みます。愛しあう二人の合意の上で、初めてのセックスが行われます。


その最中、なんと兄夫婦が突然訪れて来て、二人が裸で抱き合っているのを見て、アパート中が大騒ぎになり、警官も駆けつけて、ジョンドゥは強姦犯人として逮捕されてしまいます。興奮したコンジュは、震えているばかりで、そうなった事情を説明できません。双方の家族から、障害者を強姦した最悪の男という烙印を押されてしまいます。映画のタイトルの「オアシス」とは、コンジュの部屋にオアシスを描いたタペストリーが掛けられており、窓の外の街路樹の枝の影が映り込んでいます。コンジュはこの枝の影を怖がっていました。


隙を見てジョンドゥは警察署から逃げ出し、コンジュの家の前の街路樹の枝を切り落とし始めます。コンジュは、誰かが枝を切り落としていることに気がつき、窓の近くに行って声を出そうと思いますが、身体が言うことを聞きません。ラジオがあったので、ラジオのボリュームを最大にして気がついたことをジョンドゥに知らせようとします。近所からは深夜なのにうるさいと言われてしまいます。枝をすっかり切り落とした後、ジョンドゥは再び警察に連行されていきます。


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