町田市立国際版画美術館で「浮世絵 美人画の19世紀」展を観た! | とんとん・にっき

町田市立国際版画美術館で「浮世絵 美人画の19世紀」展を観た!



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町田市立国際版画美術館で「浮世絵 美人画の19世紀」展を観てきました。千葉市美術館は浮世絵を数多く所蔵していることでよく知られています。千葉市美術館で何度か「所蔵品展」を観たことがあります。ある時、千葉市美術館で「大原美術館所蔵品展」を観た次の日、馬頭浮世絵美術館へ行って偶然「千葉市美術館所蔵品展」を観た、ということもありました。今回の展覧会は「千葉市美術館所蔵品展」と、どこかで間違えて聞いたので、町田までわざわざ行くことないか、と思っていたのですが、なにはともあれ観ていないのでは話は始まらないと思い、町田まで観に行ってきました。


町田市国際版画美術館へ行ったら、今回の展覧会は「浮世絵 美人画の19世紀」展でした。展示品は全部で116点、そのうち1~37までが千葉市美術館蔵、38~116が町田市立国際版画美術館所蔵でした。下にある通り、「1 千葉市美術館の名品」とはっきり区分けしてありました。


「浮世絵 美人画の19世紀」展の構成は、以下の通りです。

1 千葉市美術館の名品

千葉市美術館所蔵の美人画39点を公開。

2 江戸の風俗を描く
19世紀の美人画、花魁や町娘などを公開。
3 歴史の中の女性像
  歴史的説話、歌舞伎、講談などの女性の姿を公開。
4 文明開化の女たち
  文明開化期の新しい美人画などを公開。


千葉市美術館所蔵の37点はさすがにいいものだけをもってきたらしく、どれを取っても素晴らしいものばかりでした。「喜多川歌麿は女性の自然なしぐさや心の動きをきめ細やかに描き出しましたが、『太閤記』関連の錦絵を制作したために罰せられ、2年後に没しました。19世紀の美人画の歴史は、歌麿の挫折にはじまるともいえますが、その没後も鳥文齋栄之や初代歌川豊国が活躍しました。可愛らしい顔立ちの女性像で人気を博した菊川英山も忘れられません。これに対し、渓齋英泉と歌川国貞(三代歌川豊国)は、勝ち気で妖艶な女性を描いて一時代を築きました」と、解説にあります。特に良かったものは、以下に画像を載せてあります。


喜多川歌麿、鳥文齋栄之、菊川英山、渓齋英泉は、どれを取っても文句なしです。渓齋英泉の「鯉滝登り裲襠の花魁」は、まったく同じもので「藍摺り」が並んで掲げてありました。僕は千葉市美術館で初めて「藍摺り」を観て驚きました。その時は渓齋英泉の「姿海老屋楼上之図」という3枚続のもので、「藍摺り」の方は「仮託の遊女」という題名でした。


1 千葉市美術館の名品










ここからが町田市立国際版画美術館の美人画コレクションです。歌川広重の作品は、「伊勢名所二見が浦の図」のほかに、「双筆五十三次」のシリーズ、「日本橋」「品川」「川崎」「平塚」「小田原」が出ていました。また宏茂の作品、歴史上の人物も6点、出ています。歌川国芳の作品は「小倉擬百人一首」、百人一首になぞらえた100の故事を描いたシリーズ、6点が出ていました。


月岡芳年は「月百姿」、月夜の場面を100枚にわたって描いたもの、そのうち2点が出ていました。また「風俗三十二相」は、「・・・さう(そう)」で個々の作品名を統一したシリーズで、今回は7点が出ていました。渓齋英泉にも「今様美人拾二景 愛宕山 しんきそう」がありました。「月百姿」と「風俗三十二相」は、中央大学などで観ましたが、全部揃ったものは去年5月に太田記念美術館で観ました。橋本周延の「真美人」も美人画のシリーズです。そのうち「7、11、14、22、31」、5点が出ていました。


1868年、年号が明治と改められました。明治時代を代表する美人画家として、月岡芳年、豊原国周、橋本周延が取り上げられています。芳年は国芳の門下で歴史的な画題を得意とし、写実性を志向した美人画でも知られています。国周は、三代目豊国の門下で、役者絵でつちかった描写力は美人画でも発揮されました。周延は武家の出身ですが、国周の門人となり、頭部が小さくすらりとした気品のある美人像を得意としました。美人画は明治に入ってもさかんに描かれたのですが、20世紀が近づくにつれて、次第に勢いを失っていきました。19世紀の最後の年明治33年(1900)に国周が没したのは、美人画そして浮世絵の歴史にとって象徴的な出来事でした。(いただいた資料による)


2 江戸の風俗を描く



3 歴史の中の女性像





4 文明開化の女たち



「浮世絵 美人画の19世紀」展:町田市国際版画美術館ホームページより

浮世絵の主要なジャンルのひとつに、美人画があります。美人画はその当時江戸の街で評判だった女性をモデルにすることもあれば、歴史上の人物や物語の登場人物を描くこともありました。このたびは「美人画の19世紀」と題し、町田市立国際版画美術館の館蔵品に加え、千葉市美術館の所蔵する美人画の名品をご覧いただきます。
もっとも名高い美人画家は、18世紀末期から19世紀初頭にかけて活躍した喜多川歌麿です。歌麿は「大首絵」と呼ばれる美人画のスタイルを完成し、その没後も歌麿様式は大きな影響力を持っていました。これに対し、幕末明治期の浮世絵はかつて、不当に低い評価を受けていました。19世紀前半を代表する美人画家の歌川国貞(のちの三代歌川豊国)や渓斎英泉の作品がそうです。しかしそれは後世のある一時期の評価であり、制作された当時、人々が国貞や英泉の美人画をこぞって入手したことは、現在に残る莫大な作品数からわかります。風景画の名作『東海道五拾三次』で知られる歌川広重も、特徴的な顔立ちの美人画を残しました。また、グロテスクと悪評された月岡芳年の作品は、最近はたいへんな人気を誇っています。20世紀が近づくにつれて浮世絵は衰退するかのようにみえますが、橋本周延はほっそりとしたプロポーションに卵型の顔をした「周延美人」スタイルを確立、文明開化期の風俗を描いて浮世絵史の最後を飾りました。このように、19世紀を通じて美人画は描き続けられ、かずかずの名品がうまれたのです。 
本展覧会は、千葉市美術館の所蔵する喜多川歌麿、鳥文斎栄之、渓斎英泉ら浮世絵界を代表する美人画の名手の作品を特別公開するとともに、当館のコレクションの中から三代歌川豊国、歌川国芳、歌川広重、月岡芳年、豊原国周、橋本周延らの美人画を厳選して、合計約120点の作品を紹介するものです。美人画の変遷でたどる19世紀浮世絵史、たっぷりとお楽しみ下さい。

「町田市国際版画美術館」ホームページ


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