茨城県立近代美術館で「常設展」を観た! | とんとん・にっき

茨城県立近代美術館で「常設展」を観た!

とんとん・にっき-kin4



茨城県立近代美術館で「常設展」を観てきました。千波湖のほとりに建つこの美術館は昭和63年に開館、この建物の設計は吉村順三によるものです。玄関を入ると広いロビーには、いくつかの彫刻が展示されています。なかでも僕がもっとも好きなのは、木内克の「エーゲ海に捧ぐ」というブロンズの彫刻です。木内克の彫刻のよさは、テラコッタという素材で作られたものに、魅力がより多くあります。今回の常設展では「裸婦」というブロンズ作品の他に、テラコッタの「自刻像(生活)」という作品が出ていました。


茨城県近代美術館は、横山大観,菱田春草,下村観山,木村武山ら「五浦の作家」や、河童を描くことでで知られている日本画家小川芋銭、大正期洋画壇で活躍した中村彝など、美術家の作品を中心に収集・所蔵しています。小川芋銭の「海島秋来」、槿山大観の「朝霧」「流燈」、下村観山の「大原之露」、菱田春草の「落葉」、木村武山の「イソップ物語」、安田靫彦の「鴨川夜情」、小出楢重の「毛糸の束」、そして中村彝の「カルピスの包み紙のある静物」などが所蔵されています。残念ながらこれらは今回は展示されていませんでしたが。中村彝は「エロシャンコ氏の像」や、新宿中村屋の娘・相馬俊子を描いた作品で、よく知られています。


ロビー展示


今回は、第1常設展示室では「茨城の作家と日本の近代美術4期」、第2展示室では「人間像の表現」というテーマで、以下のような作品が展示されていました。


なぜかクールベ、シスレー、モネの3点が最初に出てきます。「袋田の滝」という作品を描いた五百城文哉は、文久3(1863)年、水戸藩士の子として生まれ、明治17年、上京して高橋由一のもとに入門、洋画を学んだ人です。明治29年には小杉未醒(放菴)が内弟子になります。中村彝の「老母像習作」は小さな作品ですが、毅然とした気品が漂う作品です。中村彝の「裸体」と、麻生三郎の「男」は、ともに迫力がある作品です。それらと並んで展示されていたのが、ルノワールのオリエンタルな衣装を着たふくよかな女性を描いた「マドモアゼル・フランソワ」という作品です。


彫刻では、柳原義達の「犬の唄」があります。題名はフランスの古いシャンソンからとったもの、裸の女性が左手をちょっと突き出して立っています。決して美しいというのではなく、どこか滑稽で貧相に見えますが、顔を少し上に傾けて、胸を張っているようにも見えます。面白かったのは、石井鶴三の「中原悌二郎氏像」と、中原悌二郎の「石井氏像」、ともにブロンズの彫刻ですが、お互いにそれぞれをモデルにつくられた作品です。絵画ではゴッホとゴーギャンをあげるまでもなくこういうことはありますが、彫刻では始めて見ました。中原悌二郎は「若きカフカス人」というブロンズの作品でよく知られています。


第1常設展示室:茨城の作家と日本の近代美術4期

西洋絵画






日本画


洋画


第2常設展示室:「人間像の表現」

油彩画


油彩画・彫刻


以下、ホームページより

第1常設展示室:茨城の作家と日本の近代美術4期

茨城県近代美術館は,横山大観,菱田春草,下村観山,木村武山ら北茨城市の五浦の地で研鑽を積んだ「五浦の作家」や,生涯の大半を牛久沼の湖畔で過ごし,豊かな教養と学識をもって農村の風物や水辺の生き物を好んで描いた日本画家小川芋銭,大正期の洋画界にあって自らの生を深く見つめて描いた中村彝など,茨城にゆかりの,そして日本近代美術史において重要な役割を果たした美術家の作品を中心に収集しています。
 常設展示室第1室では,これらの所蔵品により,明治から昭和に至る日本の近代美術の展開を,茨城の作家とともにご紹介いたします。また当館は,日本において多くの画家に影響を与えた印象派を中心にしたヨーロッパ近代の美術作品を所蔵しています。日本の近代美術作品とともに,あわせてお楽しみ下さい。


第2常設展示室:「人間像の表現」

近代、特に20世紀になると、キュビスムなど新しい表現方法が生まれ、人間の描き方も様々になりました。そして、第2次世界大戦を経験したことによって、「人間とは」という問いに正面から向き合わざるを得なくなった現代においては、必然的に、人間存在の意味を深く問いかける絵画や彫刻が数多く制作されています。本展覧会では、これら人間の在り方を追究した作品をはじめ、生の輝きを礼賛する作品、また様々なエピソードを秘めた肖像画など、多様な人間像の表現を紹介します。


「茨城県立近代美術館」ホームページ


過去の関連記事:

「キスリング展 エコール・ド・パリの華」を観る!
「茨城県立近代美術館」の常設展と中村彜!