辻惟雄の「奇想の江戸挿絵」を読んだ! | とんとん・にっき

辻惟雄の「奇想の江戸挿絵」を読んだ!

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この本の帯には「ギョッとする迫力、ハッとする新しさ!!」とあり、「横尾忠則氏推薦!」とあります。「200年前に描かれた、北斎・豊国らの挿絵から選りすぐった、驚異の世界!」、そして「図版100点掲載」とあります。たしかにギョッとする本です。集英社新書ヴィジュアル版、です。「江戸後期挿絵」とはいえ、まるでマンガ、いや劇画です。「読本挿絵の中から現代の読者にアピールしそうなものを選んではどうか」と、編集側からアイデアを提供されたという。つまり、この本は出版社側から持ち込まれた企画だったようです。それもそのはず、今まで「奇想の系譜」「奇想の図譜」、そして「岩佐又兵衛」等々、ヒット作を連続して出している著者、編集者としてはぜひうちの社からもと、押しかけるのは世の常です。


今回は「挿絵の傑作をどこまで掘り出せるか」が勝負の分かれ目、と著者は語っています。結果として北斎を軸に、豊国、豊広ら歌川一門など、集めた挿絵が約100点、ほとんどが2ページ見開き?を使って掲載されています。そうは言っても結果的に北斎挿絵が多数はいることになり、歌川派を圧倒することになった、と著者は述べています。各章のタイトルがおもしろい。「異界」「生首」「幽霊」「妖怪」「自然現象」そして「爆発」と「光」です。まさに「奇想」そのものです。そして理解する上で役立つのは、各章ごとに詳細な「作品とあらすじ」が載っていることです。巻末のはこれも理解に役立つ「江戸読本略年表」が載っています。100点もある図版の中から、各章の題名と共に、図版を一枚を選んで載せておきます。


以下、カバー裏面よりこの本の解説を引用しておきます。


北斎をはじめとする江戸の浮世絵師たちにとって、版本の挿絵は重要な仕事であり、そこには、物語作者とのコラボレーション、対決を通じての創造のあくなき追求うぃ見ることができる。北斎・馬琴の「新編水滸画伝」「椿説弓張月」から無名の作者、絵師の作品に至るまで、幽霊や妖怪、異界のものたちが跋扈し、生首が飛び、血がしたたる、残虐とグロテスクに満ちた「奇想」のエネルギーが横溢しており、斬新な技法、表現、意匠の実験が絶えず繰り返されている。本書は、かつて伊藤若冲・曽我簫白らを発掘した美術史家が、この膨大な版本の世界を渉猟し、新発見の図版などから、現代のマンガ・劇画・アニメにまで流れる日本の線画の伝統の大きな水脈をたどり、その魅力と今日性を浮き彫りにするものである。


第1章 「異界」を描く

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第2章 「生首」を描く

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第3章 「幽霊」を描く

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第4章 「妖怪」を描く

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第5章 「自然現象」を描く

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第6章 「爆発」と「光」を描く

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第7章 デザインとユーモア

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過去の関連記事:

辻惟雄の「岩佐又兵衛 浮世絵をつくった男の謎」を読む!



とんとん・にっき-edo3 「奇想の系譜」
著者:辻惟雄

ちくま学芸文庫

定価(本体1300円+税)

とんとん・にっき-edo2 「奇想の図譜」
著者:辻惟雄

ちくま学芸文庫

定価(本体1400円+税)
とんとん・にっき-edo1 「岩佐又兵衛」

著者:辻惟雄

文春新書

定価(本体1200円+税)