「二人のクローデル展」を観る! | とんとん・にっき

「二人のクローデル展」を観る!


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「カミーユ・クローデル展」、昨年、2006年4月から8月にかけて、メルシャン軽井沢美術館、福島県立美術館、府中市美術館と巡回されましたが、見逃してしまいました。府中市美術館にはぜひとも行きたかったのに残念でした。実は、5月中にでも行きたいと思っているのが静岡県立美術館、なにしろ国内随一のロダン彫刻のコレクションを所有している「ロダン・ウィング」があるという。ネットで「ロダン館」の情報を取り出し、経路や運賃まで調べ上げましたが、今のところなにかと忙しく静岡まで行く時間が取れません。5月は「桜エビ」の美味しい季節、静岡へ行ったら「桜エビのかき揚げ」を食べたいと思っているのですが。




先日、川口市で開催されている「二人のクローデル展」へ行ってきました。川口といえば、かつては鋳物の街、吉永小百合主演の「キューポラのある街」、浦山桐郎監督1962年の日活作品がありました。川口駅を降りたのは約30年ぶり、駅前は高層ビルが建ち並び、どこにでもあるような駅前、あまり特徴がなく整備されていました。「二人のクローデル展」の会場はふたつ、ひとつは開館1周年の「川口市立アートギャラリー・アトリア」と、「国登録有形文化財・旧田中家住宅」の2会場です。ふたつの会場は連絡バスが運行していました。なぜ川口市のアートギャラリーがこの展覧会を主催したのか、関連は判りません。二人のクローデルとは、カミーユ・クローデルとポール・クローデルというフランス人姉弟です。






カミーユ(1864~1943年)は女流彫刻家でロダンの弟子です。代表作「若きローマ人の肖像」(ブロンズ)など、彫刻を中心に61点が展示されていました。弟ポール(1868~1955年)は駐日仏大使として日本に滞在し、日本の伝統文化を世界に紹介しました。直筆の書簡や詩のほか、画家・藤田嗣治が描いた肖像画など30数点が紹介されていました。ロダンの弟子であり、愛人でもあり、たぐいまれな才能と美貌に恵まれたカミーユ。もう20年近く前の映画ですが、イザベル・アジャーニの主演で「カミーユ・クローデル」にもなり、またロダンについて書かれたもののなかにもカミーユについて必ず出てきますので、カミーユについては多少は知っていました。この映画については後日このブログに書くつもりですが。






しかし、弟のポールについてはこの展覧会を見るまでは、その存在すら知りませんでした。日本にはことのほか愛着を寄せた詩人で、しかも有能な外交官だったとは。日仏学院の創設など日本とフランスの相互理解と文化交流に大きな力になっていたとは。カミーユは彫刻家としては早熟の天才でしたが、芸術家としてまた愛人としてロダンとの軋轢によって、自らは精神に変調をきたします。年譜を見るとカミーユは1943年に亡くなりますが、孤独のうちに30年もの年月を精神病院で過ごし、一生を終えました。「二人のクローデル展」は、カミーユとポールという二人のフランス人姉弟の、芸術にまで結晶させたお互いの生の軌跡を交差させて提示した素晴らしい展覧会でした。




二人のクローデル展


カミーユ・クローデル展:府中市美術館


映画:カミーユ・クローデル(1988)