「前川国男建築展」を見た! | とんとん・にっき

「前川国男建築展」を見た!

前川国男


先日の「吉村順三建築展」に引き続き、今年最後の美術館めぐり、東京ステーションギャラリーで開催されている「前川国男建築展」を見てきました。副題は「モダニズムの先駆者生誕100年」とあります。午前中に行ったので、比較的空いていて、ゆっくり見ることができました。とはいえ、ほとんど知っているものばかりでしたが・・・。


吉村順三と前川国男、この二人、偶然にも戦前、アントニー・レイモンドの事務所に在籍していたんですね。吉村さんは戦争が始まってレイモンドがアメリカへ帰ると、レイモンドの後を追いかけてアメリカへ渡り、日米間の戦争が激しくなり最後の交換船で日本へ帰ってきます。前川さんはコルビジュエの事務所から帰って、一時、レイモンド事務所に客分として在籍するんですが、レイモンドがアメリカへ帰ると所員数人を引き連れて、仕事もないのに独立します。


いずれにせよ、この二人がレイモンド事務所の出身ということはすごいことです。まさに「モダニズムの先駆者」です。日本のモダニズムの原点は、レイモンド事務所ということになります。レイモンドは、チェコ生まれのボヘミアンです。帝国ホテルを工事中のフランク・ロイド・ライトの元にどういう訳か日本へ来るんですね。その前歴は謎に包まれています。ほとんど実績はありません。帝国ホテルの竣工後、レイモンドは日本に住み着きます。これからがすごい!コンクリート打ち放しの建築を、世界でも初めて日本で実現するんですね。また、丸太の木構造や大きめの障子など、日本建築を合理的に解釈して作ってしまいます。まさに突如現れた「モダニズムの先駆者」だったわけです。


話が逸れて、なかなか「前川国男建築展」へ行き着きません。その辺のところを、20年ぐらい前に文章にまとめたことがあり、若い友人のI君に見せたところ、I君が前川さんの秘書にそれを届けてしまいます。それが前川さんの耳に入って、前川事務所のパーティに2人して招待されたことがありました。場所は神宮前の「建築家会館」、僕とI君は主賓の位置に座らされました。そこで見せられたのが、ブリュッセル万国博覧会の時にヨーロッパ旅行をした前川さん夫妻が写っている8mm映画!真っ白なジャガーに乗って、颯爽と運転する前川さん!それを前に行って8mm映写機を回しているブリュッセル日本館の担当者雨宮亮平さん、だったことは今回の「前川国男建築展」で初めてわかったこと。そのパーティでは所員の人たちは何度も同じものを見せられているので、延々と続く8mm映画に辟易していましたが・・・。その8mm映画が短くカットされて、今回の「建築展」で10分間の映像の一部として映写されていました。


前川事務所に若い頃の丹下健三が在籍していたのは広く知られています。戦後すぐ、木造の岸記念体育館を担当したようです。そうそう、思い出しました。前川事務所によって木造で戦後すぐに建てられた新宿の「紀伊国屋書店」、以前、僕が若い頃在籍していた事務所で、「紀伊国屋書店」の設計図録がゴミに捨てられていたので、図書のお姉さんにこれは貴重なものだから取っておいた方がいいと進言したことがありました。今回の展覧会でも出展されていました。そのまま貰っておけば「お宝」だったのに、残念・・・。


日本初の超高層になるはずだった「東京海上ビル」、確認申請を出したにもかかわらず「美観論争」にすり替えられて、三菱地所と佐藤内閣によって棚上げされた問題がありました。結局自主的?に5階分削って100mにしてなんとか確認がおりました。この話を人にするときは、いつも胸が詰まります。その「東京海上ビル」の模型展示でちょっとした工夫がありました。模型越しに窓があり、その向こうに実際の「東京海上ビル」が見えるんですよ。これには感動しました。計画ではツインタワーになるはずだったんですね。


「前川国男建築展」は、戦前・戦後を通して日本の近代建築の歴史に大きな足跡を残した建築家・前川国男(1905-86)の生誕100年を記念して、建築図面約150点、模型約30点の他、スケッチ、写真、資料に、前川がかかわったル・コルビジュエやレーモンドの建築図面も加え、計約250点で、50年余に及ぶ仕事を振り返りながら、彼の建築思想を広く検証するものです。2005年12月23日(金)から2006年3月5日(日)まで、東京ステーションギャラリーで開催されています。図録は2500円、ちょっと高いのでパスして、最近出版されたばかりの宮内嘉久著「前川国男・賊軍の将」(昌文社)定価:本体1800円+税、を購入して帰ってきました。後日、ブログにアップしたいと思っています。


以下は僕が持っている、前川国男の作品を建築雑誌で特集した貴重なもの。
・「建築」  1961年6月 特集:前川国男建築設計事務所
・「PROCESS」1984年1月第43号 前川国男:近代日本建築の源流
・「SD」  1992年4月 特集:前川国男の遺した空間


前川国男建築展:

http://www.maekawa-assoc.co.jp/100th/outline.html


過去の記事:「前川国男邸」について
http://ameblo.jp/tonton1234/entry-10003316081.html