セブに来てすぐの頃は慣れてなくて神妙な面持ちで控えめに様子を伺う少年のようだった自分も、留学生活が4ヶ月も経過した頃には完全に慣れきって調子乗りまくっていた。まさにノリノリマサノリだったあの頃。を更に超越しそこから一周回って最早古株の長老的領域に達し始めていた。

 

セブ島語学留学、例えばもっと大学とか高校へのしっかりした留学と違って単に語学学校だから、別に制限があるわけじゃないんだけど留学生の中でも半年って結構MAXの長さだった。

 

いや、まあ他にもいたんだけど滞在期間半年って人に会うと "お、お主も選ばれし猛者ですね?"とか"次々と出会いそして次々と帰っていく人々を見送り自分だけ居残り続けるその経験をこれからあなたもすることになるのです"


とは言うわけないけどそんな心境だった。

 

ノリノリまさのりは次のクラスルームまでの移動で校舎の廊下を歩くときなんかもうマインドだけは一丁前にオレ様。


"お、新入りくんたちだね、とてもフレッシュだ、君らも僕と同じようにこれから色々とここでの留学生活を経験しそして大人になっていくのだよ"的な

 

いやそんなことを実際に口にして歩いていたわけないんだけどあくまで自分の長老的マインドの説明として少しばかり誇張気味に説明をしている。

 

何百人ている学校だったからみんな知らないんだけどさ、なんか古株になってくると入学当時から最新までそれぞれの時期にそれぞれの知り合いがいてなんかどの地層の化石も少しつづは必ず顔馴染みだよ、みたいな。いやなんか変な例えしたな伝わるかないや伝わるだろな。


自分がとてつもなく顔の広い人脈お化けのような気になっていたんだけど今思うと留学先という特殊な環境が生んだただの留学マジックだった。

 

そんな普段では絶対に起こり得ない非現実的な状況が起こり続けたような半年間だった。

 

入学して比較的すぐ、たまたまのタイミングで校内の食堂でお昼一緒に食べたのが日本人女子6人に俺一人という状況で思わず"いやこの状況日本じゃまずあり得ない、マジ家族に報告しようかな"と冗談ぽく口にしたのを覚えている。

 

まあ余裕のよっちゃん俺は今日も授業が終わったら慣れてるから一人でどっかフラフラ出かけるぜー、なんてったっておれは余裕だからな!的な状態にいたことを説明したかった。


さあ、また楽しいだけの留学生活、最初の頃とはまた違った楽しさで余裕ぶっこいて毎日好きなことしながらフラフラと過ごしていた。

 



ユンスンイル。


この一人青年に出会ってからの最後の1ヶ月半の留学生活はというと突然激流の波に合流したかのように目まぐるしく展開していった。


最高な経験と同時に恐ろしく苦い経験もセットになって押し寄せてとにかく一息もつくことのなかったかのような、それくらいまるで忘れられない激動毎日になった。


いやそれはそのユンという青年一人がその全てに影響した。というわけではなくてそいつも含め気づかぬうちに二人してその激流に突入していった。したら他にも色んな人を巻き込んで大きな波になっていった。の方が正しい。


彼に出会ってから毎日は良くも悪くももう人生で2度と経験することがない、というかもう2度と経験しなくてもいいとハッキリそう思える思い出の一ページだ。


普段はあまり開かない古いアルバムみたいに、しまっておいて時々見返すのがちょうどいい。



韓国人の気さくで明るいクラスメイトのエラちゃん。


授業でゲームして負けた人が罰ゲームみたいな高校生みたいなノリは半年間を通してずっとあって、そのエラちゃんと同じだった朝イチのグループクラスもそんな感じだった。


なんか英語の授業ってより朝イチの楽しいレクリエーション息抜きクラスみたいな笑。


だから罰ゲームで音楽に合わせて踊ってみたり、会話で聞き取れなかった言葉に"トッポキ?"って聞き返したり、空気の読めない先生が話の流れで韓国の生徒にあの金正恩に一つだけ質問ができるとしたら何を聞く?なんて聞くもんだから韓国の生徒が回答に困りその場が若干気まずい空気になった時も自分の"What kind of food do you like?"の一言でその場を爆笑の渦に包んだり、なんかおれってば国際的にウケる天才。とか思っちゃったりしてましたはい(その直後には必ずビビンネンミョン!て言ってました)


だから気さくな日本人みたいな感じでエラちゃんとも完全なる校内ヨッ友。


見かければ楽しく冗談を言ったりしていたんだけど。


ある日クラスでエラちゃんが、"私の友達で日本語が話せる韓国人がいるんだけど話してみて!"みたいに言われた時があって、名前も聞いてなかったしなんか軽く"へー、そーなんだー"くらいにしか聞いてなかったからそのまま過ぎ去っていた。


花金、金曜の夜の校舎の一階ロビーはお祭り騒ぎだ。


次の日から全生徒が同じスケジュールで迎えるであろう2連休を前に夜遅くまで外で遊んで門限の時間に帰って来ても熱気冷めやらぬ、と言った感じで多くの生徒が楽しそうに飲みの延長で談笑していた。


おれがバカみたいにサンタクロース〜とか言って袋の飴玉手当たり次第知り合いに配ってる時だった。


エラちゃんの近くから明らかな韓国フェイスの、黒いキャップを被った、短いハーフパンツの青年から流暢な日本語が聞こえた気がした。


エラちゃんが言ってたのあいつだろうな。


続く。