天さかる ひなの長道(ながぢ)ゆ 恋ひ来れば 

              明石の門より 大和島見ゆ (柿本人麻呂・万葉集)

 

※ 「在所より長い海路を行きつつ、奈良の都を恋しく思っていると、オッケー!明石海峡から馴染みの大和の山々が見えるぜ!」。人麻呂らしい男性的な一首ですね。こういうのを「ますらをぶり」と呼称するのでしょう。わたしはこれをみたとき、チャック・ベリーの「sweet little sixteen」を想起しました。人麻呂は「歌聖」、ベリーは「ロックの神様」といわれています。

 ところで、芭蕉は人麻呂、曳いては『万葉集』への言及が先ずありません。やはり『古今集』以下八代集を読んでいた。また鴨長明の『無明抄』でしたか、「歌塚」というものがあって、歌人の名も無く、ひっそりと立ってあるのみ、などとありました。「歌塚」とは人麻呂を指します。もう後代は『古今集』が撰者紀貫之が標準だったのです。