第72回 東西四大学合唱演奏会 | とのとののブログ

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 2023624日に東京芸術劇場コンサートホールで開催された,第72回東西四大学合唱演奏会に行ってきました。ちらしには「僕たちは絶対に 男声合唱を終わらせない」とあり,これだけで熱くなります。

 

 前回はコロナ対策のためややこしく進められたエール交換,今回は通常のスタイル。昔のエール交換は,東西四大学に限らず,「うちこそ一番だぜ!」と気合が入りまくった演奏が多くて,空回りも含めそれが好きだったけど,今回は三大学終わった時点で,大人しめの安全運転。しかし,早稲田は違う。明るく大きな声で,元気に歌ってる。これこそ早稲田。エール交換はこうでないと。

 

 同志社グリークラブは伊東恵司さんの指揮で,「東欧の響き~東ヨーロッパ男声合唱曲集」としてKodály Zoltán1曲,Eugen Suchoň4曲。約25名。

 Eugen Suchoňは初めて聴いたけどスロバキアの作曲家。昨年のコダーイもびっくりしたけど,今年も1回生オンステで,こんな難しい曲をスロバキア語でこの時期に演奏するのは凄すぎる。「かろうじて音にした」というレベルとは,次元が異なるメリハリの効いた演奏に驚愕した。

 ステージ第一曲のコダーイ,pで歌い出すのは勇気がいる。少し強めに歌い始める曲の方が緊張がほぐれる。途中からトランペットとパーカッションが入り,「兵士の歌」らしくなりfが引き立つけれど,よくこの曲で始めた。

 

 慶應ワグネルは佐藤正浩さんの指揮で,多田武彦作曲の男声合唱組曲「雪明りの路」。1回生が30人近く入団し,今回最多人数の50名がオンステ。この新歓方法のノウハウはぜひ他の団にも伝えてほしい(言うまでもなくやってるだろう)

 演奏は,全体に安全運転。曲間で音取りしないことを含め,大勢いる1回生をしっかり育てていく方針でしょうか。

 なんとなく,関西学院が50名の新人を迎えた翌年の東西四大学で(当時はというか,最近まで1回生がこの演奏会でオンステすることはなかった),北村協一氏が「月光とピエロ」を演奏されたことを思い出した。譜面は難しくないけど,きちんとハモらせ表現に昇華するのは難しい。関西学院が吹き込んだLPでは,冒頭のベースが(以下自粛)。その取り組みは,翌年から青島広志作曲「ギルガメシュ叙事詩 前編・後編」の凄まじい名演として結実する。

 

 関西学院グリークラブは広瀬康夫さんの指揮で「東西四大学の単独ステージでは初めて」の「Barbershop Showtime!」。人数は21名と最小。パンフレットには35名程度載っているので,上回生のみか? それでも合わないけど。

 20年前の第52回では合同演奏が130人のバーバーショップ演奏。この日も演奏された「JOSHUA FIT THE BATTLE OF JERICO(David Wright 編曲)が歌われた。動画がアップされていたので観たところ,今日の演奏は動きをかなり抑えたものだった。他の団体の動画もアップされていたのでそちらも観ると,振り付けはほぼ同じ。どうやら標準的,または,手本になる演奏スタイルがあるらしい。

 

 早稲田大学グリークラブは作曲者の指揮で「三宅悠太男声合唱作品ステージ」。3曲はどれも混声原曲があり,2曲め「帰郷」以外は男声版の初演らしい。人数は30名ちょっと。

 演奏はエールに続き,のびのびと明るい声で歌われる好演。人数に比し音量も充分以上で,時折四大学でもっとも重厚なハーモニーを鳴らす。発声の違いによるのか音の合わせ方なのか自分にはわからない。

 早稲田は昭和39年に「三つの時刻」を三善晃に委嘱した際,「大きく歌い上げるのが得意」作曲者に「難しい暗示」をかけたけれど,「大きく歌い上げるのが得意」は今も生きている。こういう演奏で,早稲田の良さが最も発揮されるように思う。

 

 合同演奏は東京混声合唱団を振る高谷光信さんの指揮で上田真樹作曲の男声合唱組曲「終わりのない歌」。パンフレットによると2011年の早稲田大学グリークラブ第59回定期演奏会で初演された。「恋愛の歌を歌いたい」要望に,銀色夏生さんの詩に作曲した。

 1974年に第23回東西四大学を聴きに行ってから約半世紀,合唱から離れていた時期が長いけど,この演奏会を生で聴くのは11回目。11回の合同演奏を生で聴いたなかで,今回の合同演奏は最も感動した。素直な詩と素直な曲,力むことない大人数の安定した歌唱。しみじみと音楽に浸る幸せを感じた。あたこちの歌唱が耳に残り,「終わりなく」回ってる。いや,ありがたい演奏を聴かせていただけた。感謝。

 

 アンコール曲目は下記の写真を参照。ステージストームは,同志社が黒人霊歌Ev'ry Time I Feel The Spirit,慶應義塾はPseudo-Yoik(偽ヨイク),関西学院はU Boj,早稲田は斎太郎節。早稲田は最後まで早稲田で,立派でした。

 若人たちの(じいさんだから表現が古い),聴き応えたっぷりの演奏会に感謝。もう一度「僕たちは絶対に 男声合唱を終わらせない」にも感謝。

 

各団定期演奏会のアナウンスを転記して終わります。同志社と関学の日程が被ってるのは残念。

 

 同志社 2024218日(日)第119回定期演奏会 京都コンサートホール 

 慶應義塾 20231216日(土)第148回定期演奏会 東京芸術劇場

 関西学院 2024218日(日) 第92回リサイタル 兵庫県立芸術文化センタ

 早稲田大学 20231226日(火) 第71回定期演奏会 すみだトリフォニーホール

 

以上