新型肺炎COVID-19のデータについての私見 (2) | とのとののブログ

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 新型コロナウイルスSARS-Cov-2による新型肺炎COVID-19の感染拡大状況はどうなのか,日本の状況は国際的にどうなのかは,なかなかはっきりしない。イタリアやアメリカの感染拡大に比べ,感染者数が増え緊急事態宣言が発せられ警告されているとはいえ,患者数や死者数は感染が拡大している他国と比べ相当少ない。人口百万人あたりの感染者数や死者数は先進国の中で少なく,また3.5%と比較的高かった致死率は感染者数が増えたことで分母が大きくなり2.0%まで下がった(一時は1.8%まで下がった)

 

 しかし,この致死率は数字上のものであり注意が必要。

また感染率(人口に占める感染者数の割合)4/15時点で0.0068%と低い数字ではあるけれど,実は中国の0.0057%を上回っている,これも中国の感染者が武漢周辺に集中し中国の人口が多いことによる数字のマジックである。

 

 友人たちとのメールでの議論で,この状況を比較するためには,「感染の増加率」の時間変化を見たらよいのではという話になった。このグラフについてはFinancial Timesのグラフがよく知られている(https://www.ft.com/coronavirus-latest)

ここで示したのは補助線が引かれたもので,「感染者数が何日で倍」になるかを示しており,感染爆発した国では23日で倍になっていることがわかる。このグラフは拡大期の比較には役に立つが収束しつつあるのかどうかは,グラフが寝ていくことでしか判断できない。

 

 総感染者数(N)と新規感染者の数(ΔN)は,Wiredの記事を参照すれば以下の式で表される(https://wired.jp/2020/03/30/how-fast-does-a-virus-spread/)。ここでΔtは時間変化,aは増加率である。

これを増加率を求めるように変形すると

つまり,累積感染者数とその日の新規感染者数の比をとれば増加率がもとめられる(当然のことだが)。一日ごとの増加率を云々するのは好ましいことではないが,プロットとして眺めることはイメージ的には大事である。ここで重要なことは最初の図で,日本の感染者数は「一週間に2倍か,ややそれを下回る」ペースだったこと。このことから日ごとの増加率a(day)について,0.1を下回っていることが日本の現状維持ペースであることを示す。

医療崩壊のことを考えると,a(day)0.1を下回るかどうかが判断上のポイントとなる。

 

 比較のため,worldmetersがまとめているデータを用い(https://www.worldometers.info/coronavirus/),日本・中国・韓国・イタリア・スウェーデン,ドイツ・英国・米国をビジーな図になるがプロットした。

 

一般に初期は増加率が高く感染者数が急増するが次第に低下している。感染者が多い国々でも4/5以降は0.1を切り収束方向にあることがわかる。日本は急増は経験していないが,2/20頃から0.1前後で推移しており,特に4月に入ってからの収束方向にある各国と比べ高めに推移している。感染者数が多いので増加数は欧米の方が多いが,明らかに感染拡大は落ち着いている。

 

 次に同じデータを対数グラフで拡大してみてみる。簡略にするため施策が違う国々として,日本,徹底した武漢の封鎖を行った中国,大量の検査と軽症者隔離をすすめた韓国,自粛一切せずに集団免疫獲得を目指したスウェーデン,医療崩壊したと言われるイタリアを選んだ。

 とぢらが良いのか素人には判断できないが,感染者増加を急速に減らす上で,中国と韓国の対策は効果的。中国は武漢とそれ以外を分けて考えたいがデータがないので一律で扱った(武漢の封鎖は1/23から4/8まで)。両国の増加率はいまや0.001の水準にある(数値的には,感染者数が2倍になるのに690日かかる,ということ)。

 興味深いのは自粛を一切しなかったスウェーデンと,3/9から全土封鎖しているイタリアで,概ね似たような経緯をたどっていること。3/20以降は封鎖の効果かイタリアが下回っているが,イメージするほど大差ではない(なお,イタリアの感染率は0.27%,スウェーデンは0.12%。イタリアの致死率は13.1%,スウェーデンは10.1%)

 

 こうしてみると,日本はこれからどうすべきかは難しい。他国のような「爆発」がなく今までの増加率が低かったことが吉と出るか凶とでるか。強力な自粛で増加率0.001まで下げることができるか? それまで経済は耐えられるのか? かといって自粛をやめ感染者数急増と致死率10%を受け入れられるのか?

 

ゴールの描き方が大変難しい。

 

(2020年4月17日追記)

 日本版を作ってみた。緊急事態宣言が出される4/7前は福岡,東京,大阪が0.1を超えていた。兵庫と愛知は0.1を切りあまり変わらないけど,そのご兵庫は0.1を越え愛知は越えなかったので,さすが専門家委員会の予測は正確。4/12-3日頃から宣言の効果が出ている?

 

データソース:https://newsdigest.jp/pages/coronavirus/

 

 

以上