華ざかりの三重奏
著者:坂井希久子
出版社 双葉社 (2023/4/19)
発売日 2023/4/19
言語 日本語
単行本 (ソフトカバー)
独身で子供のいない可南子は、もうすぐ還暦を迎える。これまでは仕事一筋に頑張ってきたが、定年退職したあと、どう生きればいいのか途方に暮れている。
そんな中、子育てと介護を終えたかつての友人・芳美から、一緒に暮らさないかと誘われて…。それぞれ人に言えない悩みを抱える迷える六十歳たちは「人生の問題」にどう向き合うのか?
多くの読書家ブロガーさまの記事に惹かれて図書館本。
今のわたし、ふわふわ感を欲しているので、びったりの作品に出会えました♡
子育てと介護を終えた芳美と、独身で子供のいない可南子は、同窓会で45年ぶりに再開し、少女漫画の話題で盛り上がり、庭付きの広い一戸建てに一人暮らししている芳美から誘われて一緒に暮らし始める。
広い庭の草取りのために、ご近所でヤギ:ユキくんを飼っている中学2年生:詠人に来てもらうようになり、ふたりの刺激にもなる。
ある日、芳美の庭に剪定バサミを持った女性:香織が夾竹桃の花を切り取った現行犯を見つけた。
香織は、夫婦で花屋さんを営んでいたが、夫が亡くなり息子家族と同居するが、家が小さくて(部屋数が足らなくて)、リビングに仕切りをつけて2畳ほどの空間で過ごしているが家族がギクシャクしていて居づらいという悩みを聞き、また香織も少女漫画に熱かったことで、芳美の家の漫画を読みに毎日通うようになり、陰鬱としていた雰囲気からどんどん明るい人になっていく。
詠人は、少女漫画を勧められるが気が乗らない。恋愛感情がないのかもしれないと悩みを打ち明ける。
そこへ、香織が恋愛感情がないかもと、その歳で決めつけなくてもいいと思いますよと言う。
また、芳美は「べつに、気にすることないんじゃない。なんなら私も、恋愛ってたぶんしたことがないわよ」と唐突な告白をする。
お見合い結婚した夫は好きだった。パートナーとして信頼していた。でも、恋愛感情とは違うと思う。というより現実の男性にも女性にも、ときめいたりしたことがないからよく分からないわ、と言う。
アロマンティック:恋愛感情を持たない人のこと。
芳美は自分をそういう分類に当てはめるつもりはないのと言う。そこから芳美の熱い口上が始まる。
ひょんなことから、芳美が漫画を描いていたことがわかり、3人で同人誌を作ることになり、寝るまもなく没頭した日々。。まさに青春!
人生100年時代。
60歳から、あと40年ほどををどうやって生きるのか?
不安ばかりが膨らみがちになってしまう人とは対照的な芳美の生き方に、素敵!って思ってしまった。
何を生きがいにするかは、誰かの目を気にしていたら難しかったり、叶わなかったりするが、自信を持ってやり遂げている人は、キラキラ輝いて美しいと思った。
仕事、家事、育児、介護など、やらなければならないことを終え、ゆとりの時間を使うことができたとき、夢中になれるものがあるっていいな。
綺麗な花の咲く木を植えてやろうと、10年ほど前に夫が夾竹桃を植えたのは、夾竹桃の毒を知らずだったのか?何かの意図があったのか?読み解くことができなかった。。
キョウチクトウ(夾竹桃[5]、学名: Nerium oleander var. indicum)は、キョウチクトウ科キョウチクトウ属の常緑低木もしくは常緑小高木。庭園樹や街路樹に使われるが、中毒事例がある危険な有毒植物としても知られており、強力な毒成分(強心配糖体のオレアンドリンなど)が含まれ、キョウチクトウを植えた周りの土壌や燃やして出た煙にも毒性が残る(参照:#毒性、#薬用)。
「今日も明日も明後日も、どうせ一人なんだもの。気は楽だけど、味気ない。でも煩わしい人づき合いはしたくない。日を追うごとに、体の輪郭が曖昧になっていく感じがした。スシさんが残してくれた夾竹桃だけが、唯一の救いだったかなあ。あれ、毒があるから」p264
少女漫画に夢中な芳美の中にも、こんな気持ちがあった。
夾竹桃を切り取ったときの香織さんは、なにかに追い詰められた顔をしていた。ひょっとすると芳美も、ああなっていたのかもしれない。p264
下手をすれば、死に至るかもしれない毒。そういうものがあることに、救われる気持ちは加南子にもわかる気がした。いざとなればなにもなもを、終わりにしてしまえる力。それはあんがい、心強い。p264
人にはいろんな感情が入り乱れているものなのかな。気付いていない時もあったりして。
初めましての作家さん:坂井希久子作品。
他のも読んでみたいと思う。
ほんわか〜〜♡