ハピネス
著者:桐野夏生
出版社 ‎光文社 (2016/2/9)
発売日 ‎2016/2/9
言語 ‎日本語
文庫 ‎450ページ


高級タワーマンションに暮らす岩見有紗は窒息寸前だ。ままならぬ子育て、しがらみに満ちたママ友たちとの付き合い、海外出張中の夫・俊平からの離婚申し出、そして誰にも明かせない彼女自身の過去。軋んでいく人間関係を通じて、徐々に明らかとなるそれぞれの秘密。華やかな幸せの裏側に潜む悪意と空虚を暴き出す。人気女性誌「VERY」連載時から話題沸騰の衝撃作!





読書家ブロガーjinさまのオススメで図書館本。


桐野夏生作品3作目。
気合いを入れて読み始めたが、毒々しくなく読み終えて、ほっとした。


タワマンとその周辺が世界のすべてで、ママ友たちとの関係を中心に回る世界。


出自、経済力、夫の職業、妻の元の職業や学歴、不倫、お受験など、どこにでもあるママ友事情が、昭和のわたしの子育て期とは、さほど違っていないことが親近感はあったが、残念だとも感じた。



都会であっても、田舎であっても、時代が変わって詳細は変化していくけれど、人間関係の難しさや息苦しさは、なくなることはないのだ。



夫婦関係の危うさや、見栄を張りたくて嘘までつくというのはなんだか悲しくなるが、それもまた上手く生きていくコツなのかもしれない。



田舎育ちの有紗が都会に憧れすぎて、華かやなものや美しいものに執着しすぎている気がした。


夫俊平から離婚を切り出されても、高額なタワマンの家賃と生活費を毎月もらいながら、現実を見ずに、娘花奈の3年保育幼稚園の入園準備さえできず、その理由は夫のせいだと責任転嫁している。


嫁と義理父母との問題がこじれやすいのに、この物語では、終始優しい義理父母の存在が、この世界を安心させてくれた。





妊娠がわかって結婚し、タワマンで暮らす俊平と有紗。
2ヶ月後には娘 花奈が誕生。
娘 花奈の出産時に、有紗が経産婦だとわかり、過去(離婚歴あり、出産歴あり、夫のもとへ置いてきた息子は10歳)を知った夫俊平と妻有紗の間は喧嘩の日々。
花奈が8ヶ月の頃、ウィスコン州に単身赴任してじった俊平。


一年前にメール俊平から有紗へ衝撃のメール。

有紗へ    お願いだから離婚してください。
俺はもう無理です。
きみが応じてくれるまでは連絡しません。
離婚希望というメールをくれれば必ず返します。
     俊平
p84



俊平の気持ちはとても固いのだと思っていたが、2年半ぶりに帰宅した俊平からは、やり直そうと言う。
2年半もほっといて、、だ。呆れた。


その間、シカゴ大学に留学している女性と付き合っていた。その理由が、
「──。有紗が俺の前に好きだった男がいて、子どもまで作っていたという事実がショックだったんだ」
「俺は、有紗に復讐したかったんだよ。だから、その留学生の子と付き合って、復讐したような気になっていた。つまり、目には目を、歯には歯を、だ。それなら、俺のキャリアも釣り合うだろうというような変な論理になっていた。それくらい、有紗が好きだったんだよ」p385


阿呆らしい。
僕のキャリアってなんだ。
釣り合うってなんだ。


妻と子に2年半も会わず、一年前に離婚してくれとメールを送り、音信不通になり、ようやく帰国しての話し合いで、やり直そうと言い出す夫。


男の論理なのか?
理解できない。




タワマンの高層階に住んでいる住人は、自分が高いところから見下ろしているかのように、人を分別しているが、自分のまた、分別されていることに気づいているのか?気づいていても、気づいていないふりをして、余裕のある雰囲気を醸し出す努力をしているのか?


人を嘲けるものは、自分もまた同じようにされる、、ことも気づかないのか?気づかないふりを続けるのか?

人の心は不思議。