猫弁と魔女裁判
著者:大山淳子
発行所:株式会社 講談社
2015ねん9月15日
本書は2014年6月刊行


内容(「BOOK」データベースより)
事務所に来ない。最愛の婚約者との挙式の相談もすっぽかした。天才弁護士・百瀬は、青い瞳をした女性国際スパイの強制起訴裁判にかかりきりになっていたのだ。それはまさか、幼い百瀬を置き去りにしたあの人?百瀬によって幸せをつかんだみんなが彼の力になろうと立ち上がる。人気シリーズ、涙の完結!




猫版シリーズ5冊目。
5作目で完結なの??ってドキドキしながら一気読み。



百瀬太郎が7歳のとき、別れ際に母が教えてくれた方法。
「万事休すのときは上を見なさい。すると脳がうしろにかたよって、頭蓋骨と前頭葉の間にすきまができる。そのすきまから新しいアイデアがうかぶのよ」

私にもこの仕草、何気なくやってる気がする。なにげなく。。




5作目は、いままでとは少し違った重々しさがあり、読みながらドキドキも多かった。


謎だった百瀬太郎のお母さんのことが明らかになって、一気にスピード感アップしたような感じ。


ラストでは、えーーー(><)
百瀬太郎と大福亜子がお別れしちゃうの??
そんな思いやりってのも、ありなの??
って、ハヤトチリしちゃったけれど、そこは猫弁シリーズ、、安定のハッピーエンドで、読んだあと、ずーーーっと心地よさに包まれる幸福感。

まこと先生の結婚も、急展開だったのでびっくり。







ある日突然施設に預けられた百瀬太郎は単に天才的な頭脳の持ち主で変人ではなかった。
苦しみ、考え続けていた。
苦しい胸の内を吐露している


「母がわたしを手放した理由がわかりませんでした」
「成長するうちに、世間といものを知りました。親が子を捨てることもあると、知りました」
「もしそうだとしたら、わたしが母を怒らせたのだと思いました」
「母は正しく、絶対的でした。わたしにとって、母と法律は少し似ています。法律は完全ではありませんが、母は完全でした。完全な母がわたしを捨てたなら、わたしに非があったに違いないと思ったのです。ならば身を正し、美しく生きよう。そうすればいつか母は許してくれる。そう思いました。」
「10歳になる少し前に」  p205


「わたしには心あたりがありませんでした。何が母を怒らせたのかわからないので、自分の中に、悪と思われる要素が少しでもあれば、消しました。しらみつぶしに消しました。美しくなければ存在を許されない。美しくあらねば母に会えない。必死でした」
「消しても消しても、そのうち探しても見えなくなりました。何が悪だか善だか、わからなくなってしまって」
「どうでしょう?それでも母は迎えに来ませんでした。中学を卒業してここを出るとき、考えが変わりました。わたしはやはり捨てられたのではない、母はわたしのためを思ってここへ入れたのだと思うようになりました。母の愛は絶対的で、わたしの小さな悪など気にするわけがないと気付いたからです」
「それからはおだやかな気持ちで生きられました。わたしの人生は豊かだったと思います」 p206


7歳から考え、実践していた百瀬太郎を想像すると、苦しくなる。
それも、中学を卒業するまで続けていたのも辛すぎた。
そこまで突き詰めて考え実践続ける事は、私には難しく出来ないと思う。
ヤサグレて、ねじ曲がっていたかもしれない。
しかし、百瀬太郎は違う。
穏やかな気持ちになれるほどにまで突き詰めていたからなのかもしれない。





穏やかな百瀬太郎が法廷で、裁判官に制止されたのにもかかわらず
「35年前、7歳の息子を手放した理由を述べてください」
「母親が幼い息子を手放す。理由はどうあれ、その行為は間違っていると思いませんか」p300
と、目の前にいる被告人シュガー・ベネット(百瀬翠)に問うシーン  

そして、母親もしっかり答えた。

それに答えるシュガー・ベネット
「諜報活動のためです」
「わたしは正しかった。息子にとってあれが最良の道だった」
「あなたを見て、わたしは今、そう確信している」
p302


百瀬太郎と母親百瀬翠は、論理的思考だからこそ、感情的にならず理解しあえただろうか。
決して、感情的にならずにやりとりができたこと。
百瀬太郎の心に一区切り出来たといいなと思う。
そして、母親 百瀬翠にも。



学問をしている優秀な人間を研究と思わせて諜報活動の一員にさせる怖い団体。
知らぬ間に諜報者になってしまった百瀬翠は、自分の国籍までも変えてまでも我が子を守るために捨てた(手放した)ということなのかな。


そして、百瀬翠の命の危険を感じたからこそ、百瀬太郎はシュガー・ベネットを実刑の3年を勝ち取りたかったのだろう。


言葉でやりとりしたことのない35年。
それでも、親は子をおもい、子は親を思う。
「信じる」という気持ち一つで。



裁判終了後に、大福亜子の父親が結婚式をキャンセルしようと言い、大福亜子もみずから式場へ電話してキャンセルした報告を百瀬太郎へ告げたところで、暗くなってしまったが、どんでん返しのハッピーエンド。


秋田の靴屋の大河内三千代から言われた
「めったにいないお嬢さんだよ」【猫弁と指輪物語】
と、太鼓判を押された大福亜子は
父親と母親から、惜しみなく注がれたたくさんのものを受け取った人柄なのだと感じる。



こんなに上手くいくことは無いけれど、表と裏があるとするなら、表の心地よい部分だけ切り取って集めたものがたりっていうのも、読んでいて心地よいし、明日からの自分の生き方に繋げようと希望になる。



ことあと3作続いて読む予定。
脳内お花畑〜〜っていうのも、やすらぐ〜^_^