製品名 終わった人
著者名 著:内館 牧子
発売日 2018年03月15日
 
 
内容紹介
 
大手銀行の出世コースから子会社に出向、転籍させられそのまま定年を迎えた田代壮介。仕事一筋だった彼は途方に暮れた。生き甲斐を求め、居場所を探して、惑い、あがき続ける男に再生の時は訪れるのか?シニア世代の今日的問題であり、現役世代にとっても将来避けられない普遍的テーマを描いた、大反響ベストセラー「定年」小説。
 
 
「定年って生前葬だな。これからどうする?」
大手銀行の出世コースから子会社に出向、転籍させられ、そのまま定年を迎えた主人公・田代壮介。仕事一筋だった彼は途方に暮れる。年下でまだ仕事をしている妻は旅行などにも乗り気ではない。図書館通いやジムで体を鍛えることは、いかにも年寄りじみていて抵抗がある。どんな仕事でもいいから働きたいと職探しをしてみると、高学歴や立派な職歴がかえって邪魔をしてうまくいかない。妻や娘は「恋でもしたら」などとけしかけるが、気になる女性がいたところで、思い通りになるものでもない。
惑い、あがき続ける田代に再生の時は訪れるのか? ある人物との出会いが、彼の運命の歯車を回す──。
シニア世代の今日的問題であり、現役世代にとっても将来避けられない普遍的テーマを描いた、大反響ベストセラー「定年」小説。
 

 
定年って生前葬だな・・という始まり。
定年退職した人が社員に花束を贈られてお見送りされる儀式を生前葬と思う気持ちを妙に納得してしまった。
お父さんたちは仕事依存症。
お母さんたちは殻の巣症候群。
精一杯頑張った人たちに訪れる空虚な世界。
娘道子はズバズバ直球で現実を言葉にして伝えるのは痛快で、これからの私の生き方にヒントをくれた。
ソフトランディング(飛行機の軟着陸)の例えで、終わった人になるまでの流れがとてもしっくりきた。
田代壮介は、メガバンクの上層部にいて、そこから子会社へ出向、その後子会社へ移動、そして定年。
いきなり「終わった人」にされたわけではなく、自分が気づかなかった、もしくはうすうす気づいていても現実に向き合えなかっただけ。いきなり、ガツン!と着陸(終わった人)したわけではないってこと。
少しずつの環境の変化には気づかないのではなく、気づいていても気にならない程度なのではないかと思う。
でも、空虚な気持ちを圧倒的に受け止めて、初めて気付く寂しい現実と落ち着かない気持ち。
妻千草は43歳で美容師の資格をとり、仕事を始め、60歳で独立するまでに家庭を両立しながら生きていた。
世の中の動きを感じながら自分の世界を作ってきた人と、誰かの作った世界でがむしゃらに突き進んでいく人の違いも分かった。
成人してからは、導いてくれる人も少なく自らで試行錯誤しながら生きていくしかないけれど、未知の世界は、やっぱり未知。
未知の世界で、やりくりしていくしかないようだと感じた。
千草は「卒婚」という流行りの関係を希望し、壮介は郷里へ帰り母親と同居、そしてやりがいのあるボランティアにウキウキし始める。
いつまでもグズグスしている壮介に嫌気がさし、更に潤沢な老後の蓄えも失ってしまった壮介に対する気持ちが遠くなっているは理解できるし、定年までの壮介との関係ももしかしたら遠かったのかもしれない。
千草は自営の美容室の運営も順調で、娘道子と良好な関係を築いているようなので、さらに先の老後の心配は、その時期を感じたら今までのように道を作ろうと考えているかもしれないし、もしかしたらすでに考えているのかもしれない。
壮介は郷里に帰り母親と同居するというが、自分も高齢、さらに高齢の母親の面倒をみることになることを予測してもいない能天気な人。やっぱり現実をわかっていないと思う。
現実味がある内容だからか、イライラしたり納得したりした。
なんだか未来明るくない、現実的な内容だったから、楽しくなかった。
身につまされる。