京都造形芸術大学の学生とプロのスタッフ・キャストがタッグを組む北白川派映画の第3弾作品で、自殺の名所となった崖の近くで商店を営む初老女性の目を通し、死生観への真意をなげかける人間ドラマ。山陰の小さな港町・上終(カミハテ)で、母の残した店を引き継ぎ、パンを焼いては細々とそれを売って生活している初老の女性・千代。いつの頃からか、店のそばにある断崖絶壁が自殺の名所となり、店に見知らぬ訪問客が現れるようになる。彼らは人生の最後に千代が焼いたパンを食べ、千代も彼らが自殺するであろうと気づいても止めることはせず、ただ見送った人々が崖に残していった靴を持ちかえる日々を送っていた。千代役は「花物語」(1986)以来23年ぶりの映画主演となる高橋惠子。千代の弟役に寺島進。




高橋恵子23年振りの主演作品 

第47回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭 メインコンペティション部門正式招待 


★高橋惠子23年ぶりの主演作品! 寺島進と姉弟役で初共演! 
作品60歳の孤独なヒロイン・千代を演じるのは、本作が映画『花物語』依頼23年ぶりの映画主演作品となる高橋惠子。やり場のない初老女性の複雑な心情を静かな、しかし圧倒的な存在感で表現している。また、不器用ながらも都会で一生懸命に生きる弟・良雄を寺島進が軽妙に演じ、物語に穏やかな空気を注いでいる。大ヒット曲「赤色エレジー」などのシンガソングライターであり、個性派俳優でもあるあがた森魚も、寡黙なバス運転手役を好演! 

★高橋伴明(『TATTOO(刺青)あり』『愛の新世界』)&林海象(『私立探偵濱マイクシリーズ』)プロデュース作品! 
高橋伴明&林海象、日本映画界における伝説の監督ふたりが本作をプロデュース! メガホンをとるのは、ドキュメンタリー映画『ツヒノスミカ』で2008年度スペインの国際ドキュメンタリー映画祭PUNTO DE VISTAで 最優秀監督賞を受賞するなど、内外で高く評価された山本起也。劇映画デビューとなる本作でも、カンヌ、ベネチア、ベルリンの 世界三大映画祭に並ぶ存在としてヨーロッパで認められている、チェコのカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭メインコンペティション部門に 招待され高く評価された。 

最果ての地に佇むカミハテ商店…それは、私たちそれぞれの心の中にある場所なのか? 
いつの頃からか自殺の名所となってしまった断崖絶壁の近くに立つ一軒の古い商店。その店を営みながら、孤独を抱えひっそりと暮らす初老の女性千代。見知らぬ訪問者たちとの関わり合いの中で彼女の心が少しずつ変化していく姿を、千代に寄り添うような静謐なタッチで 描くヒューマンドラマの秀作! いじめによる若者の自殺が連日マスコミを賑わしている今、人間の“生と死"の意味を真摯に問いかける!




映像が暗い、音楽?音?に特徴がある。
暗いのか明るいのかわからない音。
千代は自殺するであろうと気付いても止めないのは何故なのか?その後、断崖へ行き靴と牛乳瓶を持ち帰る際に遺書を握り潰したのは何故なのか?
正気がない様に見える千代だが、歯磨きで歯茎から血が出たことに驚き医者へ行ったり、医者から歯医者へ行くように勧められても、重い病気なのではないかと強く不安に感じたりしているのは命に対して自分を見捨てていない様に感じた。また、その後の歯磨きで歯茎から血が出たら胸を抑える様な仕草はやはり命を大切に思っている様に見えた。
ある夜、幼い子供が「パンをください」と店に現れた。お母さんはどうしたの?とやりとりをしていた千代は店を飛び出して、自殺しそうな母親を必死で止めて警察へも連絡した。
次の日その母親は子供を道連れにビルから飛び降りたと、ある店主から聞いてしまった。その日から千代は店を閉じた。
それまではこたつに横になって、遺影の父親を度々見ているシーンが気になっていたが
「おかあさん、やめてもいいかな」と呟いてからはそのシーンが無くなった。そして、千代に変化を感じた。

ある日、以前ネットの噂で物珍しさに来た少女二人組の、気の弱そうな方の少女が再び現れた。今の少女は崖に本気で行くのだと察した千代は「行くなら行けばいい。なんでここに寄るの?とめて欲しいからなの?!」と珍しく強い口調で言う。無表情だった千代が感情を表した。変化の一歩目の気がした。
翌日、その少女の残した靴を取りに行くつもりで千代が断崖へ行ったらいつも牛乳を配達していた奥田くんが立っていた。いつも「まいどありー!」としか言わない奥田くん。障害があるらしい奥田くん。千代は奥田くんに「まいどありー!」と必死で叫び、奥田くんを抱きしめた。
更に千代の表情は明るくなって来た。洋服の色まで明るくなっているのに驚いた。
断崖へ牛乳瓶と花を添えた千代に笑顔が見られた。
父親の死をきっかけに靴を持ち帰る様になったのか?それより以前からなのか?母親がやっていたのか?その辺は不明だが、この笑顔で千代の何かの決意が見られた気がした。
ラストで、弟が仲良くしていた女性がカミハテのバス停を降りて店へ向かうのを見た千代は店の外へ出て、女性を見つめていて終わった。どうなったのかはわからないが少なくとも千代は変わっていくと思った。
千代の笑顔が見られて良かった。

断崖に残された靴を持ち帰り保管しているのは、気持ちが悪いと思うが、その理由が知りたいと思う。
作者の意図をもっと知りたいと思った。