成瀬巳喜男作品。
なんとも気風の良い女主人公の物語。
男勝りというか、男に奉仕して満足、という女ではなく、男は頼りにならないから自分で稼ぐ的な女。
で、これ公開当時、成人指定の映画になったらしい。なにもエログロ描写があるわけでもなく、ただただ「女性が強気に描かれているため」というのが理由らしい。
これはヒドイ。ようは、女が生意気な口きいて、男に依存しない自立的なふるまいをするので、社会良俗に害すると思われたのだろう。
つまり、こういう女主人公に感化されて「女が男の言うことを聞かなくなる」ことを恐れたのだ。
なので、題名の「あらくれ」とは、この女主人公のこと。
で、この女は出会う男出会う男、ろくでもないヤツばかり。
でも、これは逆にいえば、この女があまりにも有能で自立的なので、男が甘えてしまうのではなかろうか。
つまりは女が強ければ強いほど、男は弱くなるのだ。言い換えれば、弱くてもよいのだ。
さらに言えば、今日でいう所の「男性らしさ」というのは、「弱い女性」ありきで存在する者である。
弱い者を守るため、という方便を狡猾に使って、男性性というのは成り立っているのだ。
つまりは、威圧的、高圧的、暴力的、理性的、というのは、弱い女性を言いくるめるため、支配するためのツールである。
しかし、これが強い女性には通じないので、ほとほと困ってしまい、男は甘えるという最終手段に出るのだ。