ジャン・ルノワールの映画。

 

不思議な映画である。

ストーリーは至極簡単で、浮浪者が川に飛び込んで自殺を図る。

それを目撃した本屋の同じが、川に飛び込んで助ける。

身寄りがないので、その浮浪者を家に住まわせてやる、というお話。

 

この浮浪者がトンでもない野郎で、助けてもらったお礼は言わない。

というか、こいつはこの家で衣食住すべてお世話してもらいつつ、遊ぶ金ももらいつつ、一言もお礼を言わない。

むしろ、家の中をぐしゃぐしゃに引っ掻き回す。

水道を出しっぱなしにして床を水浸しにしたり、靴墨で服やベッドを汚したり。

すべてわざとやっているのだ。

さらには、本屋のオヤジの妻や愛人にもセクハラをし、妻に関しては無理やりレイプ。

 

でも、翻して家の女中と結婚するのだが、途中で川に落ち、そこでどさくさに紛れて逃げ出す。これで終わり。

 

ようは、ある一家にゲストが来て、家の中をグチャグチャにしていつの間にか去っていく、という話である。

 

これは、浮浪者を人間として観るとひどい話なのだが、浮浪者を犬とか猫だと思うと、腑に落ちる。

しつけのなってない動物が家を荒らして、いつのまに消えるだけなのだ。

 

これは当時の時代性を分かってないと理解できなさそう。

本屋の行為はどこか共産的ともとれるので、まだ第二次大戦以前のフランスの空気なのかもしれない。