面白い。

二転三転、さらに映画が終わったと思ったら、裏ボス登場みたいな感じで飽きさせない。

さらに、「タイムスリップ」モノとして、きちんと時間軸、世界線の設定がなされている。

 

タイムスリップについては、「世界は一つだけ」という設定。タイムスリップのたびに世界が分岐したり、新世界が誕生することもない。なので、野原一家は何かしらの時代変更が起きるとそれを認識できる人物となる。

なので、過去を変えると、未来も書き換えられてしまい、それに対応できない野原家は戸惑うのだ。

脚本をサボっているクソ映画では、この辺の「複数世界」と「単一世界」のいいとこどりして、辻褄が破綻していることが非常に多い。「そんな細かいこと気にするのがオカシい」と言われそうだが、仮にもSF作品、特にタイムスリップを題材にする時点でそういう視点での評価が入ることは誰でも知っているのだ。

現に、この映画でもひろしが「俺はそこそこSF詳しい」と見栄を切っているので、これは「どうぞ、SF的視点での評価も待ち受けてますよ!」という宣言なのだ。

その点で、タイムスリップ関連の時代改変、パラドクスはきれいに設定されて良き!

 

あとは、吹雪丸の性別の秘密について。

野原家を守る武士として登場する吹雪丸。もとは一国の王子、というか若君なのだが、初見で「なんか女っぽいなー」と印象を抱く。女っぽいなーというのは、オカマぽいではなく、女性が男装しているような雰囲気という意味である。

で、その辺の伏線がかなり丁寧に張られている。わざとらしさとか、説明的なところもなく、あくまで映画的に、映像で伝えるのがこれまた良き。

たとえば、「花が好き」「みさえと仲良し」「球の入った袋をしんのすけが触る」など、芸が細かい。

 

あと、劇場版クレしんに共通することだが、きちんと家族、夫婦というものを描いているのもスゴイ。これぞ、まさに子供向け映画の素晴らしいところだ。そりゃ、家族でもケンカするし、夫婦げんかもする。で、夫婦がケンカすると、子供はものすごい落ち込む。これはもう、大人の想像する20000倍くらい落ち込むのだ。で、ひろしとみさえも劇中で何度か険悪な雰囲気になったり、ケンカもする。こんなアニメ映画ないよ。夫婦喧嘩を映す映画なんて。それがすごいよ。

 

さらに、戦国時代パートが見事にエンディングを迎え、ふーっ、これで映画もお終いか―と思っていたら、驚きの第二幕が開き、近未来+時代劇風という、なんつーか「がんばれゴエモン」的世界観。

最後は巨大ロボットもの、というこれまたうるさ型が多い分野に挑んでいる。

ちゃんとそこへの伏線とかも自然にできていて、やはり作劇のうまさに舌を巻くのである。

 

世評では感動路線の『オトナ帝国』とか『戦国大合戦』が人気だろうけど、今のところ、今作が一番面白くないですか?