スーパー傑作。ものすごい映画。コレ、映画ベスト100みたいなランキングに顔出さないのはおかしい。

二重人格の連続殺人犯の話。もとい、その事件を捜査する刑事と判事の話。

 

ボストンで、看護師の女性ばかりを狙った連続殺人が発生。レイプはしないが、殺害方法はかならず絞殺。

警察の手だけでは解決しないと判断し、州が特別捜査班を集結。そのリーダーが判事。

で、ひょんなことから、真犯人にたどり着くんですが、こいつが二重人格。

で、判事と真犯人の尋問が始まる・・・、というのがあらすじ。

 

この映画の素晴らしいところはメリハリの利いた演出である。

映画前半は、警察の聞き込みと、殺人発覚がメイン。

どちらにも、画面分割、スプリットスクリーンと言われる手法をこれでもかとぶち込んでくる。

ようは、画面が2つ以上に分けられて、違う場面、別の視点からの画が映るということ。

ブライアン・デ・パルマの得意技ですが、彼はおそらくこの映画のマネをしていると思われ。

 

なんせ、この画面分割が非常に有効なのです。

特に、刑事たちが、色んな容疑者に聞き込みするシーンは、ただ単に直列に並べただけだと冗長だし、そんなに数多く聞き込みしてる感が出にくいけど、画面分割で同時並行的に色んな人に聞き込みしているシーンが映ると、観客はものすごい情報量を見せつけられることになる。さらに、色んな画面に目が散ることで、捜査のカオス感、混乱してる感じも伝わる。

 

で、映画前半はこの画面分割のオンパレードで、やや遊び過ぎじゃねーかとも思いますが、それは後半のドラマ部分との対比さえなる。

2時間の映画ですが、真犯人の男が出てくるのはちょうど1時間経ってから。

ここから、映画の質が変わります。真犯人目線の犯行の様子が描かれるのです。このパートは画面分割がぐっと減り、こいつの普段の生活の様子、いかにして女性を殺していくかが映されます。

で、後に警察に捕まるんですが、精神鑑定で「二重人格で、別の人格が殺人を犯している」ということが分かって来るんです。

 

でもね、並みの平凡な映画ならそういう設定あるでしょ?別人格になると急に口調とか顔つきが変わって「そうだよ、俺がやったんだよ!グヘヘヘヘ!」とかね。

でも、この映画はそういう映画的な飛躍をしません。ものすごい人間ドラマにしてしまいます。

まず、医者や弁護士が「尋問してはいけない」と止めるんです。「尋問して、自分の別人格が殺人を犯していたと知ればショックを受けて廃人になる」というんですね。いやいや、こいつ、これまでに11人殺してるんですけど!?と思いますが、どこにでも人権擁護派の奴はいるわけです。

ここで、判事は「うるせー!こんなヤツ死んだっていいんだよ!」とは言わず、つとめて倫理的に「それでも死刑になるよりはマシだろう」と、尋問することを主張するんです。

で、真犯人と判事の尋問が始まるんですが、これが非常に穏やかなのです。殴ったり痛めつけて無理やり、別の人格を引き出すわけではなく、あくまで冷静に対話して、殺人当時の記憶を呼び覚まし、真犯人自身に思い出させるのです。

 

で、途中、人格が短い時間だけ切り替わるのですが、マンガ的な人格豹変は見られません。すんごい地味です。地味ですが、人格が変わったことが伝わります。すごいです。これぞ名演だと思います。

この真犯人を演じたのは『お熱いのがお好き』のトニー・カーティスですが、マジで名演です。

普段の人格は、穏やかで家族思いで、自分が殺人を犯したことを知らないんです。急に逮捕されて、悩んでいるんです。その苦悩の演技が本当に素晴らしい。二重人格描写にありがちな「気が狂ってる」という感じがまったくないです。

 

この映画は実際の事件をもとにしてるということですが、途中で超能力者が出てくるのは、あれ何なんですか?www

ESP捜査で、被害者のパンツを握って「ううううう!犯人は~~~」とか言い出すんですよwww

それで、ある男を犯人と断定するんですがそれが間違いなんですよね。本当にESP捜査したんですかね。