久しぶりのフェリーニ。

これは、フェリーニ単独の長編映画監督デビュー作。

基本的には、ドタバタ喜劇。ウディ・アレンはこれをコメディ映画の最高傑作と称しているらしい。

 

あらすじは、新婚旅行中の夫婦がローマに到着。旦那は生真面目で、これからの観光スケジュールをびっしりと計画。

一方の嫁は、ちょっと上の空。実は、当時の人気俳優とこっそり会う約束を取り付けていたのだ。

この人気俳優にお熱のようで、雑誌を見てはうっとりしているらしい。

 

んで、風呂に入るふりしてホテルから抜け出し、俳優に会いに行くも、どうやら、これからロケ撮影に行くということで、流れで同行。

そこから、ロケ先の嫁と、ホテルから嫁が消えて大慌ての旦那の様子を交互に描いていく。

デビュー作でこの構成は結構挑戦的ですよね。

 

で、嫁パートで、憧れの俳優と対面するシーン。これはもう誰が見てもウディ・アレンの『カイロの紫のバラ』ですよね。うっとりとした表情の嫁って、このままミア・ファローですよ。

でも、この俳優が実は軽薄なナンパ野郎で、幻滅。終いにはロケ現場から置いてけぼりを食らう。

 

一方、旦那パートでは親戚と食事をする予定なのに嫁失踪。旦那は嘘で何とか取り繕ってその場を切り抜ける。ただ、ローマ法王と拝謁する、というイタリア国民にとっては超重要と思われるイベントが翌日に迫っていた。

 

で、なんだかんだで最後は、夫婦再会するんですが、これはハッピーエンドなんでしょうかね?あんまりそんな気はしません。

 

早くも、ロケ現場において、製作現場の内幕を描いてるのは特筆すべき点ですよね。のちの『8 1/2』の萌芽を感じます。

あと、夜の場面で旦那がしょぼくれてる場面て、あれはトレビの泉ですよね?てことは、『甘い生活』ですね。

フェリーニにしてはロケ撮影が多く、これはまだ、スタジオでの発言権が弱かったことを表してると思います。

 

この映画は原案がミケランジェロ・アントニオーニだったとか。でもアントニオーニが病気しちゃったので、フェリーニにお鉢が回ってきたらしい。

これ、アントニオーニが撮ってたら、まったく別の映画ですよね。それこそ、そのまま『情事』っぽいですよね。

女が突然消えるってね。コメディ要素ゼロですよね。夫は失意のまま、ローマの街並みを無言でうろつくみたいな、ね。『夜』のジャンヌ・モローみたいに。