中学の後輩S、彼はちょっとした不幸で転落人生となった。

といっても、彼が20歳になるかならないかまでしか知らないので、その後持ち直した可能性はあるが・・・。

 

Sはイケメン、運動神経抜群という男だった。野球部に入ってきたときも、鳴り物入りだった。

私が2年生で、3年生が引退したのち、秋から新チームとして始動するときも、Sは楽々とレギュラーとなった。しかも、1番サードという超重要ポジションである。さらに、打撃も守備も走塁もピカイチであった。

 

中学野球では打率2割そこそこだが、Sだけは打率4割か5割あったと思う。Sが打って、出塁して盗塁して生還するというのが得点源だった。

 

そんなSは致命的な弱点を抱えていた。腰痛である。原因は知らないが、幼少のころからの持病らしく、これまでに何度か爆発しており、今度爆発したらもう運動はできないと医者から言われているらしい。

なので、Sは腰が痛みだすと、苦しそうな表情をしていた。

 

ただ、私が中学にいる間に爆発はせず、八面六臂の大活躍だった。

 

で、私が高校に再会したのち、思わず形でSと再会することになった。

私は電車で高校に通学していた。その電車にSが乗っていたのだ。

どう考えても学校にも会社にも行っていない格好だった。短パンジーンズにオニイ系のシャツ、両耳にはピアス。

中学時代は凛々しい短髪だったが、そのときは肩まで伸ばしていた。

そして、両腕に女をはべらせていた。

最初、Sとは分からなかったが、声で気づいた。

あまりの豹変ぶりにビビった私は、もちろんSに声をかけることはなく、本を読んでるふりをして顔を下に向けていた。

 

変に気づかれて「あれぇ?〇〇先輩じゃないッスか」とかデカい声で話しかけられるのは勘弁だ。

機から見ればチンピラに絡まれる童貞の図にしか見えない。

 

想像するに、Sの腰痛が爆発したのだろう。で、大好きだった野球をやめざるをえなくなり、グレてしまったのだろう。

で、今や学校にも行かず、仕事もしない、チンピラになりさがったのだ。

さよならS。