中国当局のIT企業規制、国内IT企業の中国脱出を助長 | ボルタのブログ

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本文は、4月12日のロイター通信の要旨及びそれに関するコメントです

要旨

 中国IT新興企業はアントのIPO中止以来、100社以上が上場申請を自主的に取り下げ、一部は香港での上場を視野に入れている。

 前代未聞の相次ぐ撤回の背景には、上場目論見書の審査が規制当局によって急激に厳格化され、IPOの延期や却下、さらには処罰にまでつながっている状況がある。企業があわてて申請を取り下げる様子は、中国のIPOの質に疑問を生じさせる。

 この傾向が続けば、香港やニューヨークの取引所のような世界的取引所に対抗したいという中国の野望は危うくなる。折しも中国は、海外上場企業を呼び込むための新取引所の設置を検討中だ。

 中国は約2年前に上海に中国のナスダックとも呼ばれる科創板を立ち上げ、米国風の登録と情報開示に基づくIPO制度を導入した。国内のIT新興企業に海外上場を思いとどまらせるとともに、国内上場を迅速化するのが狙いだった。こうした変更は昨年、創業板にも適用された。

 しかし、中国の規制当局の考え方を直接知る銀行関係者によると、当局がアントの事業の一部に懸念を示して同社のIPOが延期されて以来、当局はリスク管理に関心を移した。

 証監会の易会満主席は先月、引受会社にIPO候補企業の審査を厳格化するよう求め、「病んだ」企業を上場させようとする者は罰すると表明した。さらに、銀行関係者によると、取引所も現在、現地調査に乗り出し、IPO書類をしらみつぶしに精査し、スポンサーを質問攻めにしている。そして、新興企業の上級幹部は自分たちの個人銀行口座を開示し、多額の取引があれば説明しなければならない。この結果、ある銀行関係者によると、上場までに要する期間は従来の平均6カ月から同12カ月に延び、現在100社以上が科創板への上場を待っている状態だ。

 新しいIPO制度は、迅速な上場を求める多くの企業を引きつけていた。それが今では「規制当局が細部の点検や立ち入り検査に執ように関心を払い、企業を脅して追い払っている」と、待機状態になったままのIPO案件数件を抱える投資銀行関係者は説明。「市場に企業評価の権限を与えるというIPO改革の目的に反している」と語った。

 

コメント

・中国国内のIT企業、特にBATH(中国の巨大IT企業バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウエイの総称)を始めとした企業は江沢民派所属だ。

・一連の中国当局によるIT企業規制の原因は、中国国内の派閥争いだ。習近平派は江沢民派の李克強から経済への影響力を削ごうと躍起になっている。こうした中、アリババの実質的な支配者であるジャック・マーは習近平の政治を批判するような発言を行うと、中国はアリババ傘下のアントの大規模IPOを中止させた。アントはアリペイを運営する中国経済を支える大企業のはずだった。

・そして、中国当局はアリババに対しても直接的な規制をかけ始めた[1]

・中国当局は1月20日、国内電子決済市場の独占を抑える規則案を示した。これは、アリペイのみでなくテンセントが運営するウイーチャットペイも規制するものだった。[2]このように、中国当局はアリババだけでなく、テンセントまでも追い込みをかけている。

・そして、バイドゥや他のIT企業に対してもIPOの審査の厳格化や企業に対して個別に監査する処置等を行っている。

・このような一連の措置は、中国のIT企業は中国脱出に始まり、事業撤退まで自国経済に害を及ぼしている。また、中国の2020年の企業債権は50兆円規模まで拡大したといわれている。そうした中でも中国当局は規制や制裁をやめる気配はないどころかさらに加速させている。2021年の中国企業の債権はさらに拡大しそうだ。

・今後、中国IT企業はさらに肩身の狭い思いを強いられるだろう。しかし、日本IT企業にとって、中国のIT企業の弱体化は好ましい状況だ。なぜならば、これを機に中国依存から脱却し、内需拡大を促進する絶好の機会だからだ。

 


[1] ボルタのブログ:中国当局、アリババに独禁法違反の疑いがあるとして過去最高額の制裁金を検討 URL:https://ameblo.jp/toneriko1517/entry-12662018463.html

[2] ボルタのブログ:テンセントとアリババのフィンテック事業、独占禁止法違反となる可能性 URL:https://ameblo.jp/toneriko1517/entry-12651929893.html