国防、根底から不透明に ―イージス・アショアの配備、停止― | ボルタのブログ

ボルタのブログ

色んな記事をまとめ、自分の考えであるコメントをつけるそんなブログです

要旨

日本の弾道ミサイル防衛(BMD)は、2段構えで、まず日本海上の海上自衛隊のイージス艦が迎撃ミサイルSM3等を発射し、迎撃を試みる。打ち漏らした場合は地上への弾着約数十キロ目前で航空自衛隊のパトリオットシステムPAC3(通称、PAC3)が迎撃する。

海上自衛隊は7隻のイージス艦を保有する。北朝鮮の弾道ミサイルは日本の安全保障上、極めて脅威だ。これに対抗するため、イージス艦の洋上展開が常態化し、乗員の人繰りや補給整備の面で負担となっている。


また、海上自衛隊の本来任務の一つである東シナ海などの海上での警戒・情報収集任務が手薄になる弊害も出ていた。政府がイージス・アショア[1](Fig.1)導入を決めた理由にBMD能力向上と既存のイージス艦を警戒・情報収集任務へ振り向けたいという思惑があった。

Fig.1 日本に導入が検討されていたイージス・アショアのモックアップ

 

最近は北朝鮮のミサイルと同等以上に中国の東・南シナ海等への海洋進出が脅威となっている。イージス艦は高い索敵能力を有するとともに、中国公船等に積載されている巡航ミサイルへの迎撃能力も保有する。イージス・アショアが配備されなければ、一定数のイージス艦は常にBMD用途として日本海に釘付けとなる。


しかし、防衛省は15日、秋田県と山口県で進めていたイージス・アショアの配備計画を停止すると発表した。イージス・アショアから発射される日米で共同開発中の迎撃ミサイルSM3ⅡA[2](Fig.2)は、ブースターやモーターを数段階に分け分離させる。分離されたモーターやブースターを周辺住宅などに落下させず、配備される演習場内ないし、海上に落下させるためにはソフトウェアだけでなく、ハードウェアを含むシステム面からの見直しが必要であることが分かったためだという。

Fig.2 SM3ⅡAの外観と各セクションにおける開発の担当

 

コメント

・「イージス艦」1隻は1,500億円なのに対し、「イージス・アショア」システム1基の価格はおよそ800億円とかなり割安だ。また、運用に必要な人員もイージス艦の300人より少なくて済む。

・防衛省は、SM3ⅡA以外に、SM-6(Fig.3)も同システムに採用し、弾道/巡航の両ミサイル防衛の機能を持たせようとしていた。

Fig.3 SM6の外観

 

・イージス・アショアは、初期費用こそ掛かるものの、運用コスト等の面でイージス艦よりも優れており、長期的な目線で見れば効率的であった。

・しかし、現地住民からの反発の声が大きかったことなどから、配備は見送られることとなった。

・イージス・アショアの配備が決まってから秋田と山口では外国人が突如として住みだすという奇妙なことが起こり始めた。そして、反対活動はマスコミの取材活動がある日に活発に行われた。マスコミの行ったフェイクニュースはこれを加速させた。

・防衛省には、SM3ⅡAを改良するとともに、地元住民からの交渉等の努力を行い、是非ともイージス・アショアの配備を目指してほしいものだ。

・イージス・アショアの配備を前提に構想してきた国防態勢は不透明感を増した。その一方で、イージス・アショアが配備される予定であった秋田と山口の両県知事は歓喜の声を上げている。果たして彼らは安全保障の重要性を理解していたのだろうか。甚だ疑問が残る。

 


[1] イージス・アショア:イージス艦に搭載するBMDシステムを地上配備型にした装置で、レーダー(SPY-1等)を含む管制サイトと垂直発射装置(Mk 41 VLS)などで構成される。

[2] SM3ⅡA:日米共同開発のミサイルでSM-3ブロックIAに比べて性能が大幅に向上するため、防護範囲が拡大している