中国、米国のファーウェイ制裁により急遽 国内企業のSMICに投資 | ボルタのブログ

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本文は、5月22日の日経新聞の要約及びそれに関するコメントです

要旨

中国の半導体生産最大手SMICが中国政府系ファンドから2400憶円の出資を確保した。増産や技術開発に充てるという。

SMICにはもともと政府系ファンドが出資している。今回は上海工場を運営するグループ企業に中央政府系と上海政府系の2つのファンドが投資するという。

上海工場では回路線幅14ナノメートルの半導体生産能力を12ナノメートルに対応させるとともに、シリコンウエハの生産量を月6千枚から3万5千枚に引き上げさせるという。

投資を急ぐ背景には、米国によるファーウェイ制裁がある。先日発表した制裁強化でファーウェイはテロ支援企業と同じ扱いとなり、ファーウェイが設計した半導体でも、米国産の技術が10%以上入っていればファーウェイに供給することを禁じるというものであった。

これまで、ファーウェイは、半導体などの生産を台湾のTSMCから輸入していた。しかし、TSMCはこのアメリカの発表を受け、ファーウェイからの新規受注を停止した。

中国は、SMICをTMSCに代わる企業にさせたいようだ。しかし、両社の技術力の差は明確だ。TSMCの最先端商品は、回路線幅5ナノメートルであり、TSMCとSMICには2世代分の格差があるという。この回路線幅は、CPU等の性能に直結する。そのため、SMIC製品では高性能のスマートフォン等には用いることができないという。

以上のことから、TSMCが供給を止めた後はSMICが代替を担うことは限定的なものにとどまるだろう。

中国は、15年に発表した「中国製造2025」という政策の下、半導体製造を伸ばすと打ち出した。これは、半導体製品の自給率を20年には40%、25年には70%にするというものだ。そして、中国政府は半導体企業を支援した。(表)しかし、19年の半導体自給率は19%にとどまっている。

表:中国政府が支援する主な半導体企業

*チップセット:CPUと各機器を繋ぎ、PCやスマートフォンの性能を左右する

*NAND型フラッシュメモリー:SSDやSDカード、USBメモリなど、データ記憶用のストレージとして用いられる

*DRAM:パソコンのメインメモリなどに用いられる

 

コメント

・米政府はファーウェイを含む中国通信企業について、米国のサプライヤーからの製品調達を禁止している。既に米国輸出規制の下では、合計金額に占める米国製品の割合が25%を上回る外国製品は、対中輸出規制の対象となっている。それが先月に規制が強化され、アメリカはファーウェイに対し、テロ支援国と同様の扱いの10%までとなった。これによりファーウェイ、ひいては中国はアメリカが抑えている基本設計及び開発支援ソフトが使えなくなり、今後の開発・設計は頓挫する可能性がある。

・・中国共産党系メディア、環球時報は、中国共産党は、中国の法律や規制に従ってクアルコム、シスコ、アップルなどの米国企業に制限を課したり、調査を行うとともに、ボーイング飛行機の購入を一時停止したりする考えがあることを述べた。

また、同記事は、中国も企業ごとにエンティティー・リストを作成し、それに従って米国製品の制限を行うとも述べている。

・過去にファーウェイ以外にもZTEやシャオミなども米国の制裁対象となった企業は存在する。中国が反撃すればその代償としてこれらの企業が再び制裁の対象となる可能性は十分にある話だ。

・中華系企業のスマートフォン、特に5G対応製品はCPU等の核心技術はクアルコム等の米国企業の技術を使用している。この中国の反撃は自らの首を絞めるような行為であり、実施すればアメリカだけでなく、国内の有力者からの反発は必至だろう。

・SMIC以外にもクアルコムに依存しない5G用チップセットを開発したと述べる紫光集団傘下のUNISOCにも中国は注力しており、中国政府系ファンドはUNISOCに6億7000万ドル(約750億円)の資金提供を行うという。