三菱電機、MEMS式車載LiDARを開発 | ボルタのブログ

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本文は、3月12日の三菱電機のプレスリリースの要約及びそれに関するコメントです

要旨

三菱電機は、水平・垂直の2軸で走査する電磁駆動式MEMS[1]ミラー搭載の小型で広い水平視野角を持つ「MEMS式車載LiDARライダー[2]」を開発した。(Fig.1)開発品の寸法は、幅108×奥行き105×高さ96mm(体積は900cm3)。実用化時には、開発品の約1/3となる350cm3まで小型化する計画だ。

Fig.1 MEMS式車載LiDAR

従来、モーターで回転するミラーにレーザーを照射し、周囲の状況を計測する「機械式」が主流であったが、モーター駆動部の部品数が多くなることから小型化が難しく、高コスト、またモーターを常に駆動させるため、温湿度や振動などに対する耐久性などが課題とされていた。

三菱電機が開発した「MEMS式車載LiDAR」は、水平・垂直の2軸で走査する電磁駆動式MEMSミラーを搭載、広い水平視野角下での高精細な3次元画像を取得し、この課題を克服したという。(Fig.2)

具体的には、波長905nmのレーザー光を前方にミラーを介して照射し、対象物(車両や歩行者など)に反射して帰ってくるまでの時間を基に、対象物までの距離を測定する。2軸で走査するため、対象物を立体的に識別できる。

この独自のミラー構造採用により面ひずみを抑制し、業界最大級(7mm×5mm)の軽量ミラーでの広い振れ角(水平:±15°、垂直:±3.4°)を実現した。

2軸電磁駆動式 MEMS ミラーと、複数のレーザー光源の高密度実装と最適配置により、広い水平視野角(120°)を実現することで、先行車両や歩行者などの高精細な3次元画像を広範囲に取得することが可能だという。(Fig.2)

Fig.2 開発したライダーにより取得した 3 次元画像

今後は、垂直視野角のさらなる拡大に向けた開発を進め、25°以上の垂直視野角を実現し、近距離の車両や歩行者の検知を拡大、小型化を実現し、2025年以降の実用化を目指すという。

 

コメント

・実用化に向けた最大の課題は、自動車メーカーの要求仕様を満たしながら、コストをどこまで下げられるかである。三菱電機は、実用化時のコストは10万円以下を目指すというが、競合メーカーもコスト削減でしのぎを削っている。

①イスラエルのスタートアップであるイノビズ・テクノロジーズ(Innoviz Technologies)のMEMS式LIDARは、ドイツBMWが21年に実用化する自動運転車「iNEXT」に採用される。量産開始時の価格は1000ドルで、量産規模になれば500ドルにできるという。

②LIDARの大手企業、米ベロダイン・ライダー(Velodyne LiDAR)も、MEMS式LIDARを開発中である。検知距離が約80m、水平検知角が60度、垂直検知角が10度の製品で、100ドルの価格を目指す。

 三菱は、これら企業と性能だけでなく、価格でも勝負する必要があり、最終的に量産態勢時の価格として、5万円を目指す必要があるだろう。

・2020年4月1日、日本でついにレベル3の自動運転が解禁になった。2025年には政府の自動運転レベル4がより具体的に審議され、認可される見込みがある。それまでに自動運転車のコスト面における最大の課題であるLidarの価格を下げられるかも自動運転レベル4普及のカギとなるだろう。

 


[1] MEMS(Micro Electro Mechanical Systems):微小電気機械システム。

[2] LiDAR(Light Detection and Ranging):対象物に光を照射して反射光を検出、距離の測定や先行車両、歩行者などの形状を3次元画像に変える、自動運転に不可欠なセンサー。