12月17日刊行予定
実録ノンフィクション
「僕は、死なない。」
全身末期がんから生還してわかった、人生に奇跡を起こすサレンダーの法則
刀根健著
ソフトバンククリエイティブ
著者によるブログ無料公開 第1回
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第1部『体験編』
1 運命の日
「病気の名前は、肺がんです」
2016年9月1日、人生が変わった。
都内にある大学病院の狭くて薄暗い廊下から診察室に入ると、白衣を着た医師が座って待っていた。
「えー、こんにちは、担当をさせていただきます、か・け・が・わ、と申します」
眉間に深いしわが刻まれ、苦悩が顔に張り付いたような50代半ばの男性だった。
「刀根です。よろしくお願いいたします」
「えー、検査の結果なのですけれども……」
掛川医師は言葉を選びながらも、僕の肺の状況を淡々と、そして詳しく説明し始めた。
「これ、あなたの左胸です。
ここのところ、ちょうど鎖骨のちょっと下あたりに約1・6センチほどの影が映っています。これですね」
彼の指差すCT画面には、他とは明らかに違う白い塊が写っていた。
「それと肺の中の空気の通り道というのがですね、この真ん中の黒くなっているところなんですけれど」
と言って胸の画像で真ん中に黒く映っている通り道を指差した。
「これが右と左の肺に分かれていく、2本に別れていくところのちょうどこの小股のところに、赤いところがあります。ここも怪しい」
彼の指差した分岐点が不気味に淡い赤色を放っていた。
「なので、内視鏡の検査ではもともとの左肺の影の部分と、ここの赤くはれている部分と、両方検査を行なわせていただいたということです」
「内視鏡……ああ、あの口からカメラ入れたやつですね」
僕はそのとてつもなく苦しかった検査を、ちらっと思い出した。
「そう。それで、その結果なのですが……どっちも治療が必要、という結果が出たんですね」
「治療? と言いますと?」
「その病気の名前は、肺がんなんです」
「……」
「で、肺がんのうちの、顕微鏡で見た顔つきでは、腺がん」
「両方ともですか?」
「そう」
「体調はいたって元気なんですけど」
「肺がんは自覚症状が出たときには相当進んでいる可能性が高い病気なのです」
「普通に運動とかも、毎日してたりするんですけど」
「はい、気づかないケースがほとんどなのです」
「そうなんですか」
「はい、で刀根さんの場合はどういうことかというと、母屋がこちらで」
左胸の塊を指さした。
「もう片方はですね、大きくなるために必ず血管をまたいでいきます」
彼の指先がCT画面の上を動く。
どうやら左胸が母屋で、気道の分かれ道のところが転移らしい。
「血管のそばにはかならずリンパの流れがあって、その両方、あるいはそのどちらかを使って病気が身体全体に広がります。
今の段階では、これが腫れているだけでとどまらず、もう1個内側のリンパの流れにまで領域が広がっているということがわかりました」
彼はそう言うと、左肺の中にある白い部分を指さした。
そこは明らかに右よりも大きく膨らんでいた。
「リンパにも転移している、ということですか?」
掛川医師は眉間にしわを寄せてうなずくと、さらに続けた。
「で、さらに、さらに、ペット検査で見ると……」
「さ、さらに?」
「ここに緑色の部分がありますね」
彼の指先は僕の前側の肋骨下部を指していた。
ちょうど胃の真上当たりの骨だ。
そこがほんのり緑色に光っていた。
「これがですね、ここだとちょっと……」
「ちょっとって?」
「あのー、背中が痛いとか、刀根さんにはないでしょうか?」
掛川医師は言いずらそうに言葉を続けた。
「ないです」
いやな予感がする。
「特にないんですね?」
「はい」
「あのー、今の段階で言いますとですね……えっとペット所見があって……お見せいたします」
モニターの画面を切り替える。
いやな予感がさらに増す。
「病気が進行している可能性があります」
掛川医師は上目づかいに言った。
「進行?」
もう一度念を押すように、掛川医師は説明を始めた。
「で、えー、さっき言ったリンパっていうのはですね、左の肺門という場所」
「あ、さっきの分かれた部分ということですね」
僕は確認するように言った。
「そう、ここと左胸にがんがありますよ、ということになります。あとリンパで、さらに……」
「さらに?」
「胸骨」
「胸? 胸骨!?」
僕は慌てた。
「ここなんですが、これも……」
医師は再びモニターを指差す。
「転移している?」
思わず聞き返す。
「はい、転移している可能性があります。
それで、あとですね」
「ま、まだある?」
「それで……ほんとに所見的にはですね……あのー、肺の中なんですけれど……空気は基本的に黒く映るんです」
掛川医師は言いにくそうに話した。
「はい」
確かに僕の肺はほとんど黒かった。
「肺は風船の集まりなんで、黒いところがメインなんです。
この白い筋は血管です。これ、あなたの右胸のほう」
掛川医師は今度は右胸のCT画像を指さした。
「血管とは似ているんだけど、ここにあるプチとか、ここにあるプチとかは血管のように見えて実は血管でない可能性がある」
僕にはその区別がつかなかったが、掛川医師は続けた。
「まー、あのー、我々はそういったうがった目で見ていかなきゃいけないんですけど、そうするとですね、右側の肺にもそういった場所があるのかもしれない」
「それは、右胸にも転移しているということですか?」
「うん、そう。
まー、今の段階で言いますと、ペット検査で骨のことを考えないで赤いところだけ、骨以外の赤いところだけ、この部分と、この部分と、この部分」
掛川医師は画面を一つずつ指さした。
「骨を入れない状態で、進行度は3のAという病期になります。」
「ステージ3ですね」
「はい」
「で、骨のところまで考えますと、これ4期」
「4期……ステージ4ってことですね」
「そう。で、3A期または4期だけど、まあこの所見上からいうと4期と捉えたほうがいいのではないかと」
「うーん」
僕は言葉を失った。
〈つづく〉
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「僕は、死なない。」
全身末期がんから生還してわかった、人生に奇跡を起こすサレンダーの法則
第一部 全身末期がん・絶望からの生還 編
Chapter1 突然のステージⅣの肺癌宣告
Chapter2 抗ガン剤を拒否。あらゆる代替医療、民間療法を試みる
Chapter3 脳、骨、肺、肝臓、腎臓、脾臓、眼球・・・全身に癌が転移し、緊急入院
Chapter 4 やるだけのことをやってたどり着いた「明け渡す」境地
Chapter 5 「治る」という確信
Chapter 6 明け渡し後に訪れた4日間の奇跡
Chapter7 全身の癌が消滅。そして退院。
第二部 サレンダー(明け渡し)の奇跡 編
Chapter8 僕が癌になったわけ~肺癌ステージ4からのメッセージ~
Chapter9 頑張っても、諦めても、奇跡は起こらない
Chapter 10 強烈なエゴを手放したとき、明け渡しは起こる
Chapter 11 4日間の奇跡が教えてくれたこと
Chapter 12 「明け渡し」が引き起こす”最強の引き寄せ”
Chapter 13 サレンダーという生き方
(表紙画像はまだ“仮バージョン”のようです)
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