グータッチに思う | いきょくのまねーじゃーのブログ

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市立砺波総合病院の整形外科医です

グータッチに思う

 

 選挙速報を見るのが好きである。昨日は、以前、金沢大学病院で一緒に仕事をしたことがある先輩が立候補されていたので、結果が気になった。20時の時報と共に、多くの当選確実が発表されたが、先輩の名前がなかなか出てこなかった。

 

 開票速報と共に選挙戦の様子も映し出される。当選が決まった候補者の様子も伝えられる。その映像を見ながら、「グータッチ」が気になった。

 

 私たち外科医が手術をするとき、清潔野と不潔野を分ける。消毒された部位に滅菌された道具だけだけがある場所が清潔野である。稀に誤って、手が不潔野に触れてしまうことがある。その手は不潔とみなす。手袋を交換したり、手を消毒しなおしたりする必要がある。そう考えるとグータッチだって、感染リスクとなるように思ってしまう。

 

 話は変わるが、コロナウイルスは、多くは飛沫感染すると考えられている。接触感染や空気感染もあるとされる。コロナウイルスに汚染されていないところは、見て分からないはずである。そう考えると、コロナウイルスがいない「清潔野」は作りづらい。せいぜい「準清潔野」と言ったところかもしれない。

 

 グータッチは、外科医の私からすれば、感染対策としては、握手するのも変わらない。どちらも、他人というある意味不潔野に触れる行為である。(もちろん自分が不潔野の可能性も同様にある)なのに、多くの候補者は、支持者とグータッチをしていた。今までの選挙なら握手する場面で。

 

 不思議に思って調べてみると、グータッチの方が、握手より感染リスクが低いそうだ。

 

 

これはあくまで、大腸菌を使った実験であるため、飛沫感染が多くをしめるコロナウイルスに通用するかは分からない。なのに人は、グータッチをして感染対策をしている気分になっているように見える。さらにグータッチをしている様子を見て、対策をされているものと勘違いしていると思う。(日本人の生活様式がコロナ感染拡大に影響している可能性はある。)

 

 そう考えると、グータッチばかりではなく、いろんな感染対策が、実効性が十分検討されないまま、なんとなく良さそうと行われている可能性がある。しかし、それでいいのかもしれない。ゼロリスクを求めれば、人はひとりぼっちでいるしかなくなる。対策は、ほどほどでいいのだが、ほどほどが感染状況で変わっていく気がする。

 

 話を戻す。昨夜23時過ぎになって、先輩の当確がついた。以前一緒に仕事させていただいた時には、多くの患者さんのピンチを乗り越えてこられた先輩である。先輩は、科学的な判断の上で、以前のような生活を回復するすべを示してくれると信じている。

いつの日か学会で出会ったら(もう学会には来られないかな?)、「グータッチ」じゃなくて、握手してもらいたいな?