9回裏ツーアウト… | いきょくのまねーじゃーのブログ

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市立砺波総合病院の整形外科医です

「9回裏ツーアウト満塁、1点負けている。…」

 

 妻との会話を紹介する。高校生のAくんは野球選手で、私の外来にも受診に来られたことがある。Aくんは体調を崩し、学校を休みがちで、留年の可能性がでてきた。「どう声をかければよかったのかな」という妻に「俺なら『9回裏ツーアウト満塁、1点負けている。さあ、どうする。自分は足がいたいが、出られないわけではない。ベンチに残るのか、それともバッターボックスに立つのか。』って言うけど。」というと「その言葉もっと早く教えて欲しかった」と妻はいう。医学的知識だけでは解けない問題の例でもある。

 

 そんな会話をした日の新聞に、「ノーアウト満塁のピンチに立つピッチャーのつもりで、一球一球を投げる。」という言葉をみつけた。

http://www.sankei.com/column/news/161116/clm1611160003-n1.html

記事の内容はおいておくが、妻との会話のあとだっただけに、この一節だけがとても気になる。

 

 人生いろんな場面でピンチはやってくる。それは、もしかするとチャンスかもしれないが、そう思えないことが多い。「ノーアウト満塁のピンチ」のときに、これを抑えれば、「ピンチのあとにチャンスあり」なんていう言葉は、頭に浮かばないのである。そんなときに、ピンチがチャンスであることを気づかせてあげるのもいいと思う。

 

 「とにかく、同点に追いつけばいいじゃないか。延長戦もわるくない。」そんなエールをAくんには送りたいが、私の外来に来てくれるかどうかは、わからない。こちらから、行くことができないのが私たち医師の仕事である。

 

 いずれにしても、診察のときにいつも『ノーアウト満塁のピンチのピッチャー』のつもりで診療したいね。打ち取っても、取られても…。