蘇生後脳症が… | いきょくのまねーじゃーのブログ

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市立砺波総合病院の整形外科医です

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「蘇生後脳症の患者さんが多い」

 当院は、514床。私が全部の患者さんを把握しているわけではない。しかし、「昨夜、重症患者さんが搬送された。」「ICUに心肺停止後の患者さんが入院している」なんていう話は、情報として入ってくる。

 毎朝、私の受け持ち患者さんを回診して、ICUへ足を運ぶ。その理由はいくつかある。私の外来患者さんが、夜間に救急搬送され、入院されることが多い。「あらっ、どうしたの?先週元気に来てくれたのに…」などと声をかけて励ます。本音は、こんなことになることを予測できないことに対する罪滅ぼしである。もちろん医学的に予見することができない疾患ではあるものの…。あとは、自分自身のスキルアップのためである。他科の先生や救急の先生の処置をみて学ぶ。

 そうしていて、最近気づいたことがある。「蘇生後脳症」とよばれる状態の患者さんが多い。蘇生後脳症は、「心停止により脳への酸素供給が途絶えると,意識は数秒以内に消失し,3‐5分以上の心停止では,仮に自己心拍が再開しても脳障害(蘇生後脳症)を生じる。」と日本救急医学会のホームページに書いてある。(http://www.jaam.jp/html/dictionary/dictionary/word/0115.htm) つまり、一旦心臓が止まった後、蘇生処置によって心拍が再開したもの、残念ながら脳に障害が生じたもののことをいう。

 「蘇生後脳症」が多い病院はいい病院だろうか?結論から言えばいい病院だと思う。後遺症を残していい病院というのはおかしいと思われるかもしれない。

 しかし、その理由のひとつは、心停止に至るような重症の患者さんの診療をしているということである。多くの心停止の救急患者さんを受け入れている証拠でもある。さらには、初期治療が的確であり、心拍が再開しているということ。もちろんできない症例もあるのだが…。しかし、心拍再開までには、異常の発見や搬送などに時間がかかり過ぎて「蘇生後脳症」となっている。決して治療が悪いからではない。

 私がこの病院に赴任したときには、こんなに「蘇生後脳症」は多くなかった。その理由は簡単である。心停止患者さんが、救急受診時に心拍再開をするような治療ができなかったのである。もちろんかりに心拍再開に成功してもその後数日後に亡くなったことも予想できることではあるが…。

 以前にも「蘇生後脳症が多いなあ」と感じたことがあった。そのときと、今には、共通点がある。それは、救急専門医の存在である。救急のH先生は、先日一緒に食事をしたときに「私が赴任して、前年度と救急患者数も重症度もかわらなかったんだなあ」と残念そうに話をされていた。しかし、明らかに当院の救急の実力が向上しているように思う。重症患者さんを助けることができる可能性は大きくなっていると肌で感じている。それが「蘇生後脳症患者さんが多い」。もちろんこれで満足していないけどね。
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