指揮:クリスティアン・ティーレマン

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ブルックナー:交響曲第5番 変ロ長調 WAB 105 (ノヴァーク版)


今年のベストコンサート。

芳醇なVPOと剛腕のティーレマンの組み合わせ、本気でした。

2013年のベートーヴェン、2019年シュトラウスのプログラムに次いでこのコンビを聴くのは3回目。

対抗配置で下手側にチェロとコントラバス、16型。木管の後ろに金管楽器が2列でずらりと並んでいました。打楽器はティンパニーのみ上手、その他は下手。

冒頭はピッツィカートで始まりますが、しっかりと大きな粒度でずっしりと音を弾き出します。そして金管のコラールの後、優雅なイメージのあるウィーン・フィルから轟音が聴こえてきました。

曲を通じてコクのある音、明るい響きが基本で、一方で低音もずっしりでフルスケールのオーケストラが豊かに響き渡ります。


全体でも自由自在にテンポと音量を変化させているように聴こえました。3年前のベルリン・シュターツカペレ来日時にバレンボイムの代役でブルックナー7番を聴いた時はどこかあざとさを感じましたが、今回は不思議と違和感はありませんでした。下から大きくしゃくりあげるような振りは減り、オーケストラに任せる部分が増え、しゃがみながら弦楽器に頻繁に左手の手首で指示しているのが目立ちました。

テンポは前半はゆっくり目で、3楽章冒頭から一気に加速していった感じで、フィナーレも最後のコーダ直前までは加速し走り抜けましたが、音の濃い密度は変わらないままでした。これほどしっかり吹いて弾いてもうるささを感じずバランスも崩れませんでした。普段聴いている演奏と、特に金管群のスケールの大きさと響きの分厚さ、そして馬力、スタミナが違いすぎました。肉食系です。

休止の残響音も美しい減衰。

ティンパニーは一セット(4台)なのに二人います。二人目は補助席のような位置に座っていて、クライマックスで2回だけ加わっていました。

エンディングもフラブラもなく、音が消え、指揮者が棒を下ろすまでしっかりと休止してからの大拍手。

ここしばらくのVPOで聴いた中ではダントツの出来、本気になっていたように感じました。ダブルコンマス体制で第一コンマスのホーネックさんの影響も大きいのでしょう。

ティーレマンは楽員が座ったままで指揮者のソロカーテンコールを受けていました。このオーケストラでは珍しい。

来日前の現地での定期演奏会のリハーサル映像と、短いながらもティーレマンのインタビュー記事も興味深いです。

https://www.youtube.com/watch?v=kybWRMOxp50


21世紀の流れでは、自分が聴けたヨッフム、チェリビダッケ、ヴァントらの最晩年の過去の巨匠が繰り広げた演奏スタイルはもうほぼ絶滅したものと思っていましたが、ハイティンク以来実に久しぶりに充実したブルックナーが聴けました。これが東京で聴けたことに感謝しかありません。