指揮:ジョナサン・ノット

笙:宮田まゆみ

演奏:東京交響楽団


曲目

武満徹:セレモニアル

マーラー:交響曲 第9番 ニ長調


ついに、お別れの時が来てしまいました。最後の定期で、11年前の就任披露と全く同じ武満徹のセレモニアルとマーラー9番で締めくくります。

特別なので珍しく2日間通いましたが、感想はより良かったと思う2日目の方です。


会場は厳粛な雰囲気に感じられました。

前座の武満徹。10分ほどの曲。笙の神秘的で厳かな響きから始まります。

木管の2列のうち手前がぽっかりと空いていて、2階席Cブロックと、4階席左右のブロックの通路に2人ずつ、オーボエとフルートが配置されていました。オーケストラの響きはフランス音楽の趣でした。最後は再び笙の独奏で幕。


木管奏者の戻りを待って、いよいよメインプロのマーラー。

1楽章は冒頭六小節で密度の濃いハープの拍から、ヴィオラがさざめくようなトレモロで繋ぎ、第2ヴァイオリンのゆったりしたメロディーが始まります。楽章通じて人生か旅路の終わりの別れを惜しむかのように、慈しむように丁寧にゆったりと進めていきます。このあたりではまだ弦がどこか密度が薄いようにも感じました。鳴らそうとしているのにまとまらない。しかし杞憂でした。

2楽章と3楽章はいずれも荒々しい表現で、スコアの表題に書かれている通り煽っているかのようで、テンポ早く畳み掛けていきます。

木管もいつも以上に表情づけが豊かで、存在感が強い。ソロ楽器だけでなく、コントラファゴット、イングリッシュホルン、バスクラリネット、ピッコロなどもしっかり聴こえました。

3楽章からアタッカで入ったフィナーレが圧巻。テンポは落として、1楽章と4楽章、2楽章と3楽章をペアにしているような印象。

対抗配置のヴァイオリンが両翼で切ない金切り声を上げます。1楽章の最初のメロディーといいこの4楽章といい、対抗配置は極めて効果的でした。弦の密度は厚さを増し、特に中低音は合奏はもちろんチェロ・ヴィオラのソロ共に見事でした。

全曲通して、避けられない死に向けて行きつ戻りつしながら、最後5分以上かけて消えていく部分はノット監督によれば「別れ」の音楽であり、息絶えるかのような弱音は集中力高く研ぎ澄まされた美しさ。最後は死を達観したような明るい世界が広がっているように聴こえました。

音が鳴り終わってからノット監督の棒が降りるまでの2-30秒、息を呑むかのような静寂さも素晴らしいものでした。83分間の長く短い旅でした。

全体では細かい瑕疵はあったかもしれませんが、このコンビらしく常にリスクをとりチャレンジをしたコンサートだったと思います。

カーテンコールでは楽員からの足踏みでノット監督が2回も指揮台に上がって答礼。舞台がはけた後も、ノット監督だけでなく、多くの楽員がステージに戻ってきて、特注のタオルで記念撮影状態。愛されてますね。







あとは年末の第9と大晦日のジルベスターコンサートを残すのみ。ですが実質的には今回の定期が締めくくりでしょう。ノット監督、来年は都響と大阪フィルに客演ですが、東響への客演はなし。退任後の桂冠指揮者などのタイトルもないようで、一時代を築いた監督に対してなんだかなという気もしますが、きっと将来また来てくれるでしょう。


在任中、マーラーの交響曲集、シュトラウスのオペラ三部作の演奏会形式、リゲティや新ウィーン楽派、フランス音楽、エルガーやブリテンの声楽曲など幅広いレパートリーを紹介してくれました。

チャレンジを続けたコンビの12年間の旅路の円環が幕を閉じようとしています。感動的な大団円でした。ノット監督に心からの感謝と、これからの新天地での活躍を祈念します。