指揮:ジョナサン・ノット

曲目

ラヴェル:クープランの墓(管弦楽版)

ブルックナー:交響曲 第7番 ホ長調 WAB 107


灼熱の東京、最高気温は35℃、午後6時開演で良かった。

ブルックナー7番メイン、前座はラヴェルの「クープランの墓」という珍しい組み合わせ。ノット監督のいつもの対抗配置、前後半とも第二ヴァイオリンを増強していて、12-12-8-6-4、16-16-12-10-8だったように思う。


ラヴェルは木管、特にオーボエのソロが美しい。

個人的には3曲目が一番。ゆったりした曲想の中で、静かな部分のトレモロや東響の弦の美質が生きる。おとぎ話の光景が浮かんでくるような別世界へのトリップ。


後半のブル7、このコンビでは2回目。以前は10年前くらいで前半の2楽章がえらくゆっくりなテンポだった記憶がうっすらと残っている。


今回も驚くくらい前回と全く同じ印象。

弦を中心にゆったりと旋律を歌わせて、振りも抑制的でテンポは動かさず、なかなか曲が進んでいかない。第一楽章だけで22分、2楽章までで47分もかかっていた。

2楽章後半はシンバル、トライアングル、ティンパニーが入ってもフルマックスの音量にならず均衡も崩れない。

ところが3楽章のスケルツォになった途端に、ノット節とも言える頻繁なキュー出しとテンポの変化が出て、急に動き出してこれがフィナーレまで続いた。音量と熱量も一段階上がったように感じた。

前半の遅さにずっと違和感を感じていたが、ノットは前半を緩(静)、後半を急(動)と分けて扱っていたのではないか。1楽章はアレグロだけれどもモデラート、実質的には緩徐楽章と考えれば納得がいく。

1楽章と2楽章の後の聴衆の咳がすごい量だった。これも前半はずっと匍匐前進で息苦しさがあったのだろう。後半になって急に煽るようになったのも、後半を急と捉えれば納得がいく。

長年この曲を聴いてきたが、このような気付きは今回が初めてだった。

フィナーレの終わりの急がせすぎ煽りすぎは一般的には盛り上がるかもしれないが、私には違和感が残った終わり方で、このコンビはブルックナーよりマーラーの方が向いていると思った。


ノットの任期も実質残り1年半となった。最後は就任披露で取り上げたマーラー9番で締めてもらえるといいと思う。


プログラム冊子は薄く、客演指揮者のプログラムの記事があるのに音楽監督のコンサートの記事がない。ラヴェルとブルックナーを組み合わせた意図や7番の曲についての見解をインタビューして欲しかった。