[ネタバレ注意]

ウィーン国立歌劇場でのワーグナー「ローエングリン」のプレミエ公演。

指揮はクリスティアン・ティーレマン!

プレミエは聴衆にとって誰もが初めて見る演出なので、今までの伝統の中からどんな反応が出るのか興味津々です。

プレミエ公演はWebでの解説や特別記事も多く、詳細極まりない解説が記載されてます

これが伝統。

https://kalender.wiener-staatsoper.at/kalender/detail/lohengrin/



当日はオペラ座に「本日プレミエ」の垂れ幕がかかり、場内では前日の別演目では見かけなかった蝶ネクタイをした人達も目につきました。

ティーレマン登場と共にブラボーの嵐。しばらく拍手が鳴り止まない。

そして前奏曲が始まるとなんと繊細で美しい弦であることか。一人一人の音が聴こえるかのように研ぎ澄まされた響きでした。

幕が上がると、遠くに灯台のような影が見え、手前にエルザが水面から何かを引き上げようとして力尽きて倒れ、遠くにはオルトルートが無言でその状況を見つめている、というシーンから始まります。

舞台設定は3幕とも共通していて、3つに分けられてエリアがそれぞれ可変式に上下しながら演者である歌手が移動しながら展開していきます。

最近流行りの読み替え演出はあまり感じませんでしたが、最後の結末がこれまでと違ったり、服装は現代風で主役のローエングリンも騎士という服ではなく普段着の延長が大部分でした。(結婚式のエルザは除く)

ローエングリンの登場前は舞台上にたくさんの人がいて、遠くからローエングリンの声が聴こえ、段々と近づいてくるとザワザワする、そこで間があってどうやって登場するか、舞台上も客席も固唾を飲んで見守っている感じ。すごい緊張感でした。でも結局白鳥は出てきませんでした。


モチーフの繋がりと音楽と演技で感情の動きを表現したり、オーケストラの重厚な響き(特に金管楽器)と合唱団の力、音圧が加わった響きが圧巻の陶酔感を巻き起こしました。

歌手ではアンニャ・カンペのオルトルートの悪女役の迫力と演技がすごい。主役二人を喰ってしまう存在感でした。オペラでは歌だけでなく演技もしっかりこなすことが求められているということですね。

ものすごいものを見たということと、プレミエでの「再創造」の現場に立ち会えた興奮で、翌日の今でもまだ頭の中がぐるぐるしています。



カーテンコールは歌手と指揮者への熱狂的なブラボーと演出へのブーイングが交錯していました。

演出は舞台設定はやや無機的で、服装も必然性が感じられなかったし、華のある舞台ではなかったのでブーイングにも納得です。

ワーグナーはとにかく長いし、登場人物も語りも多く何を歌っているかもわからないし敬遠していましたが、今回は事前にストーリーをさらっておいたのと、日本語字幕のおかげもあって4時間半もあっという間でした。

今年は初めて東京で「トリスタンとイゾルデ」の劇場版と演奏会形式の双方を聴き、今回の訪欧で「ラインの黄金」「ローエングリン」を聴いていると、ハマりそうで怖いです。

学生時代にバックパッカーしていた旅先の欧州で会った同じ旅行者の先輩に、「最後に辿り着くのはオペラだよ」と言われたことを数十年経った今になって思い出しました。

改めて全てをプロデュースするワーグナーの凄さ、前奏曲のモチーフが曲のあちこちで出てくる痛感すると共に、ワーグナーのようなドイツ語のオペラはドイツ語圏の劇場で聴くのが本物ということをまざまざと体感しました。人材の厚み、過去からの蓄積の厚み、総合力としか言いようのない素晴らしい経験となりました。



翌朝には地元新聞に早速批評が掲載。

「少なくとも音楽的には成功」との見出しです。

またカンペが主役を喰っていたという印象は間違っていなかったようです。


LOHENGRIN

Besetzung am Montag 29. April 2024


König Heinrich:GEORG ZEPPENFELD

Lohengrin: DAVID BUTT PHILIP

Elsa von Brabant: MALIN BYSTRÖM

Telramund: MARTIN GANTNER

Ortrud: ANJA KAMPE

Heerrufer: ATTILA MOKUS

Vier brabantische Edle: 

Juraj Kuchar

Oleg Zalytskiy

Johannes Gisser

Ferdinand Pfeiffer

Vier Edelknaben:

Antigoni Chalkia

Piia Rytkönen

Lucilla Graham

Dymfna Meijts

Musikalische Leitung: CHRISTIAN THIELEMANN

Inszenierung: JOSSI WIELER, SERGIO MORABITO

Bühne & Kostüme: Anna Viebrock

Licht: Sebastian Alphons

Ko-Bühnenbildner: Torsten Köpf