今年のGWは欧州へ。

スイス・チューリッヒに到着早々、湖に面したチューリッヒ歌劇場で「ニーベルンゲンの指環」の第一夜、「ラインの黄金」。
今日は単体での再演ですが、東京の新国立劇場では4年かけて全曲上演したものをこちらでは5月に全4作を1日おきにツィクルスで2回、わずか7日間で上演するそうです。こういう芸当は日本では無理でしょうね。
欧州の歌劇場は建物自体も見どころたっぷり。ネオ・バロック様式の構造で、ホワイエは簡素で入ってすぐ左右の階段で上の階に登っていきます。
19時開演の45分前に早々と入場しましたが、ドア越しにホールからの歌手やピッコロ、ホルンなどの音が聴こえてきます。間際まで音合わせ中で、座席につけたのは15分前でした。
開演前のアナウンスが終了した後、場内の照明が消されたのと同時に音楽が鳴り始めました。オケはもちろんのこと、最初からピットに指揮者が入っていたようです。

舞台は白を基調とした、3つに分かれたセットで、頻繁に人と舞台が回転してストーリーが展開します。舞台は中世ではなく、歌手の服装はドレスやスーツだったり最近の欧州では普通の読み替え演出と思われますが、極端な演出ではなく白と黒を使い分けて状況描写をしていた感じでした。




休憩はなしの2時間35分。配置転換のため3回ほど幕が降りましたが、驚いたのは数分の間にガラッとレイアウトが変わるのと、音楽も中断しないのでめくるめくスピードで話が展開していきます。火や煙を吹いたり怪獣の顔が飛び出したり、テーブルの上で土足で踊ったりと、視覚的にも飽きさせません。

歌手については私は素人の上に門外漢なので一人一人についてコメントする資格はありませんが、印象に残ったのはヴォータン役のトーマス・コニエチュニーで、指環を手にした前はバリトンのドスの効いた声、後は高めの声と指環を恍惚とした表情で見つめる豹変した演技も出色で、カーテンコールで1番の拍手をもらっていたのも納得でした。

ホール内部は他の欧州の大都市の歌劇場より小ぶりで、後ろの席でも十分に歌手の表情まで見えます。コンパクトなので音はよく聴こえますが、オペラ座の中でもここはドライで、ワーグナーの分厚いオーケストレーションがあまり響き渡る感じではありませんでした。
オーケストラ単体では日本でも欧州に近い水準が聴けますが、劇場版は、劇場、歌手(歌と演技双方)、演出、オーケストラ、合唱、聴衆の総合芸術、まだ差が大きいですね。
情報量が多くまだ消化できていませんが、忘れないようにと長々と書いてしまいました。
明日からはウィーンで「カルメン」、ティーレマン指揮の「ローエングリン」プレミエが続きます。楽しみです!