3週間ぶりの生音。オペラシティは完売御礼。

前半に珍しいシベリウス「タピオラ」はあったが、なんといっても後半のマーラー5番がすごかった。

全体的にゆっくりめのテンポで、じっくりと丁寧に歌っていく。指揮のキューは一小節ごとに違う楽器や方向に向いていると思えるほど詳細かつ精密で、手の内に入りきった設計。葬送行進曲の冒頭から突き抜けるトランペットの独奏、それに続く第二主題のメロディーに隠れた、コントラバスのピチカートにチューバのが合わさる聴こえにくいハーモニーもくっきりと浮き上がっていた。

弦楽器の音が、普段のこのコンビより艶消し気味に響いていたのは、楽譜のせいか、それともこの日の演奏がそうだったのか。

音量が上がるところでは14型ながら1台プラスの七人でのコントラバスのゴリゴリ感と圧がすごく、低音の響きが大事だと改めて痛感。


金管は1楽章のトランペット独奏と3楽章のホルン独奏が圧巻。ホルンは2楽章が終わってから指揮台横のソリストゾーンに移動し立って演奏。普段はパートでひとまとまりで聴こえがちだが、ソロパートとアンサンブルの音の違いや、ホルンの蔓?の向きで音量と響きのレンジが広い。特に3楽章の後半は強音と弱音の対比が素晴らしかった。こんなホルンのステレオ効果はもう実演では聴けないかもしれない。

久しぶりのマーラー5番の実演だったが、諧謔的なメロディー、歌い回し、響き、リズムがボヘミアンなんだと感じた。

4楽章のアダージェット後半からは景色が変わった感じ。曲が明るくなったことだけではなく、弦の艶消しが消えて一気に解放感が出て、最終楽章のクライマックス、最後のコーダはそれまでとも一段違う高みを感じた。このコンビでは2年前のマーラー9番で感じた衝撃度と双璧の出来。

楽章間のチューニング2回は集中力が切れるので良いとは思わなかったが、そんなことはどうでもいいと思うほどの完成度の高さ。スタオベでトランペット、ホルンの女性ソロ奏者を連れてきたのも納得。

高関シェフの回はアンサンブルがしっかりしているので安心して聴いていられる。緻密なあまり、練習では細かくて厳しいんだろうなとか、自由度はあるのかなと邪推はするけれど、この日の最後は突き抜けた感があった。

来月からの新シーズンはブルックナー8番、スメタナ「我が祖国」全曲、マーラー7番、ヴェルディ「レクイエム」など大曲揃い。楽しみでたまらない。