2024年歌手第2弾、レオ・ヌッツィ。
初めて聴いたのはコロナ前の2019年、イタリア・ミラノのスカラ座でのヴェルディ「椿姫」、ジェルモン役で圧倒的な存在感を示していました。
当時のメモには、「前半弛んでいた舞台が、ヌッツィが登場しやや枯れた味ながら深みのある風格を示した途端に風景が一変。ここでスイッチが入った。そこにいるだけで周りに影響を与える生きる伝説。」と残っています。
当時でも70代後半ということで最初で最後だろう、でももう一回聴きたいと心の中で思っていたらコロナ後の往来が再開し日本に来てくれることになりました。
曲はヴェルディ中心のイタリアオペラからアリアの抜粋。
レオンカヴァッロの道化師前奏曲の後、アリアへは休止なく、オペラの一場面のようにヌッツィが登場し、今回も度肝を抜かれましたし、曲が終わる前から客席から拍手とブラボーが沸き起こりました。
「椿姫」の「プロヴァンスの海と陸」も5年ぶりに聴けて感無量です。年齢を全く感じない、サントリーホールの空間に豊かな声量とずっしりゆったりと明晰な声が響き渡ります。
どの曲も長年の舞台生活で身に染み込んでいるのでしょう、オペラの役のように表情とジェスチャーも交えながら聴かせどころでギアを一段上げてクライマックスを作る構成力。ただただ感服です。
オーケストラのみの序曲や前奏曲を挟んで歌ったのは5曲、最後のドン・カルロの「私の最期の日」でAddio(さよなら)と歌った後でプラスアンコール2曲。
スタオベでブラボーが鳴りやまず舞台中央から客席に近付いてステージ周りを一周。
指揮者の代わりに楽員を讃えたり気配りも聴衆へのサービスもして、マエストロ兼務でした。
先週の不調だったフローレスと比べるのは酷ですが、キャリアと役者が違いすぎました。日本で言えば人間国宝みたいですね。太陽のように輝き、周囲を笑顔にする人でした。
最後になるであろう、記憶に残る演奏会でした。